安倍派の「パー券購入者比率」は6年連続「0.675」 架空の数字を記入か 毎年同比率は二階派と2派閥のみ

2023年12月31日 06時00分
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で東京地検特捜部の家宅捜索を受けた安倍派と二階派ではここ数年、パーティー券の販売枚数に対する購入者数の割合が毎年同じになっていることが分かった。政治資金収支報告書に架空の購入者数を記入していたとみられる。ずさんな会計処理の実態に、識者は「政治資金の収支報告のチェック機能が不十分」と指摘する。(浜崎陽介、三輪喜人)

◆「ありえない、天文学的確率」

 パーティー券は通常1枚2万円。1人(1社)で1枚買うこともあれば、複数枚買うケースもある。このため、販売枚数と購入者の比率は年によってばらつきが出なければ不自然だ。
 安倍派(清和政策研究会)の収支報告書によると、昨年のパーティーは5月、東京都港区のホテルで開かれ、9480万円の収入があった。これは2000年以降では、民主党政権だった10~12年の8000万円台に次いで少ない。推計販売数は4740枚で、購入者数の3200人は販売枚数に「0.675」をかけた数値になる。
 販売枚数に対する購入者の割合は、16年以前はばらつきがあった。だが、17年は2億98万円の収入で推計販売数は1万49枚、購入者数は6784人で、枚数に対する購入者の比率は0.675。17年以降、6年間同じ比率で、機械的に購入者数を計算して報告書に記載していた可能性が高い。
 自民党ベテラン衆院議員の元秘書は本紙の取材に、「比率が毎年一緒なんてあり得るのか。そんな天文学的確率のパー券の売り方なんてできるわけない」と言い切った。

◆抜け道?代表が国会議員でなければ監査なしでOK

 二階派(志帥会)のパーティーは昨年5月、千代田区のホテルで開かれた。収入は1億8845万円。購入者数は7538人で、比率は「0.8」。19年以降は全て同じ比率になっており、それ以前の年も「0.8」が散見される。

総務省

 他の主要派閥の麻生派(志公会)、岸田派(宏池会)、茂木派(平成研究会)は毎年ばらつきがあった。
 総務省政治資金課によると、国会議員が代表などを務める「国会議員関係政治団体」では、収支報告の提出に際し、総務省の「政治資金適正化委員会」に登録した弁護士や公認会計士、税理士による監査を受けなければならない。支出について領収書などと照らし合わせてチェックされる。
 ただ、政党の派閥は分類上「その他の政治団体」に当たり、安倍派も二階派も国会議員ではない会計責任者が代表を務めている。弁護士らの監査の必要はなく、総務省は「数字はチェックするが、中身を調べることはない」としている。

 政治資金パーティー 政治家や政治団体が活動資金を得るために開く。政治資金規正法は収入から経費を差し引いた残額を政治活動に充てることを認めている。1回のパーティーで20万円を超す支払いを同一の個人や法人などから受けた場合は、政治資金収支報告書に支払った側の名前や住所が記載される。1回で1000万円以上の収入がある場合は「特定パーティー」と呼ばれ、開催日や収入額などの記載義務がある。自民党派閥の場合、1回で1億円以上を集めるケースもある。

◆「性善説」のチェック制度では不十分 岩井奉信・日大名誉教授

 (パーティー券の販売枚数と購入者数の比率が毎年同じなのは)絶対にあり得ない。いかに元の数字がいいかげんかということがわかる。それを繕うために、それらしい数字を記入し、面倒だから前年と同じ割合でいこうとなったのではないか。

日大の岩井奉信名誉教授

 もともと安倍派は派閥の規模に対して、収入が少なすぎると言われてきた。過少申告が連綿と続いてきたのだろう。なぜこういうことがまかり通るのかといえば、政治資金規正法自体が「性善説」で作られており、チェック機能が不十分だからだ。
 これを機に、政治資金をチェックする仕組みをつくるべきだ。一つは監督する機関をつくることだが、これはハードルが高いかもしれない。会計責任者が罪に問われれば、議員も議席を失う連座制も考えられる。
 比較的すぐに導入できるのは、まず、現金でのやりとりはやめて記録に残すこと。それから収支報告書を全て電子データで提出し、すぐに公開するようにしてはどうか。現在の掲載期間は3年だが、それ以上にできるはずだ。報告書の分類や項目も工夫して見やすくした方がいい。それによって有権者に監視させることで、抑止力になる。(談)

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