女性が「私の居場所」つくるには…ジェーン・スーさん新著でインタビュー 吉田羊さん、一条ゆかりさんら13人

2023年4月4日 12時00分

取材に応じるコラムニストのジェーン・スーさん=東京都千代田区で(稲岡悟撮影)

 「女らしさ」に縛られない生き方や、ジェンダー平等への視点を発信してきたコラムニストのジェーン・スーさん。「自分の居場所をつくり出す女性の物語を」と、タレントや美容家、俳優ら13人のインタビューをまとめた新著を刊行した。今回の本に込めた思いや、いま感じている問題意識について聞いた。(聞き手・奥野斐)
 —タイトル「闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由」に込めた意味は。
 自分の居場所をつくるというのは、自分という花を咲かせること。ちょっと不格好でも「これが私が咲かせた花」と思えることが健やかな自尊感情だと思う。日陰から日当たりのいい場所に移った人や、肥料をあげて太い幹や枝を伸ばした人もいる。それぞれの庭で闘い、花を咲かせている。

ジェーン・スーさんがインタビューした13人

 —30〜70代の、ジャンルも年齢も異なる女性たちが登場する。
 漫画家の一条ゆかりさんは「ずっと、私のためだけに存在する私の椅子が欲しかった」と。そう思っている女性は少なくない。その椅子をどうやって手に入れたかを尋ねると、一条さんほどの情熱や強い意志がある人もいれば、俳優の吉田羊さんみたいにあまり自信はないけれど、ひたすらコツコツやってきて、居場所をつくった人も。タレントの辻希美さんは地に足をつけて生活し、何が一番大事なことか分かっている。
 13人を通して読むと、宝探しで宝を見つけたような興奮があった。共通するのは、めげない、ふてくされない、自分を能力のない存在としては定義しない。他人の期待に200%で応える…。働く上で、すごく大事なところだなと思う。

ジェーン・スー著「闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由」

 —新著は日本経済新聞の「私の履歴書」の女性版をイメージした。「女性の物語」が必要な理由は。
 前例が見えれば、自分にも同じことが起こり得ると思える。なのに、いまの日本には身近でうまくいっている人の話が少なすぎる。
 昭和50年代くらいの小学校の図書館にあった女性の伝記は、献身的な活動、自己犠牲、苦難を乗り越える話ばかり。「あの人は特別」とか「私と違うから」とか言わないで済むぐらいいろんな物語が必要。「これが欲しい」「あれをやってみたい」と、自分の夢をかなえていく女性がもっといてもいいんじゃないか。
 —日本社会のジェンダー不平等については。
 決定権を持つ人たちのジェンダー不均衡があり、選択的夫婦別姓など男女不平等な状況を変える法制度がなさすぎる。クオータ(人数割り当て)制を入れるとか、バランスを変えなければ。
 「女らしく」という言葉に従順に生きると、何かに「ノー」と言うこともできなくなる。SNS(交流サイト)で先日、ジェンダー平等やSDGs(持続可能な開発目標)を掲げる企業の役員に3分の1も女性がいないなら「そんな会社の言うことは寝言だと思って聞かなくていい」と書いた人がいた。見てる人は見てる。いま変えないと、若い人は海外に行ってしまう。

 ジェーン・スー 1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。ラジオパーソナリティー、作詞家としても活躍。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」などに出演。著書は「生きるとか死ぬとか父親とか」(新潮社)「おつかれ、今日の私。」(マガジンハウス)など多数。新著は文芸春秋刊、税込み1650円。


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