「スラムダンク」の聖地、海が見えるあの踏切が再びにぎわい 迷惑行為も問題に「コロナで静かだったのに」

2023年2月2日 12時00分
 アニメファンの「聖地」と呼ばれ、コロナ下では訪れる人が減っていた神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄・鎌倉高校前駅そばの踏切が、外国人観光客らで再びにぎわいを増している。踏切が登場するバスケットボールアニメ「スラムダンク」の映画版の世界的ヒットが、懐かしさを誘う湘南の風景の魅力を海外にも広めているようだ。ただ、ここは本来、静かな住宅街。地元の反応は複雑だ。(砂上麻子)

写真を撮る人でにぎわう鎌倉高校前駅近くの踏切=神奈川県鎌倉市で

 踏切の先には、相模湾が広がる。柔らかな陽光を受けて光る海面をバックに電車が通りかかった。1990年代に放映されたテレビアニメの冒頭に登場する場面を逃すまいと、平日にもかかわらず集まっていた30人ほどが一斉にカメラを向けた。東京都内から来た会社員の男性(53)は「漫画のファンでしたが、映画も感動した」と話した。
 原作は90年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載された漫画で、今なお絶大な人気を誇る。アニメやゲームも制作された。
 昨年12月3日に公開された「THE FIRST SLAM DUNK」は原作者の井上雄彦さんが監督と脚本を手がけ、架空の「湘北高校」バスケ部員たちの成長を描く。観客動員ランキング(興行通信社)で8週連続1位となり、観客動員数は640万人を超えた。国内のほか、香港や台湾などアジアでもヒットを続けている。
 先月4日に公開された韓国は公開から2週間で観客動員が100万人を突破。かつて漫画やアニメを楽しんだ30〜40代の男性が人気をけん引しているという。
 韓国の大邱テグの学校事務員の男性(33)は映画を見て、踏切を訪れた。「漫画もアニメも好きでした。映画は昔の友人に再会できたようでした」。ソウルの大学生、キム・ミンジュンさん(25)は「ファンの間では、ここは韓国で一番有名な日本の場所。子どもの頃からファンなので来られて感激です」と喜ぶ。映画は「帰ったらすぐ見に行きます」と声を弾ませた。

◆「線路に入ったり危険」 市も「積極的に来てとは言えない」

 一方、車道に出ての撮影やごみの放置など、一部の観光客の迷惑行為が問題になっている。踏切前のマンションに住む女性(77)は「道路に人があふれて通れないし、線路に入ったりして危険。コロナ下でしばらく静かだったのに」と顔をしかめた。

踏切には英語と中国語、韓国語でルール順守を呼びかける看板が設置されている

 江ノ電は外国人観光客が増え始めた6年ほど前から、英語や中国語、ハングルで書かれた看板を設置して注意を促す。土日と5月の連休には鎌倉市と協力して警備員を配置する。市観光課の担当者は「積極的に来てほしいとは言えない」と話し、踏切を観光向けにPRする考えはない。
 江ノ電の担当者は「マナーを守って安全に楽しんでほしい」と呼びかける。

おすすめ情報

首都圏ニュースの新着

記事一覧