トランプ氏ら米共和党と旧統一教会の半世紀にわたる関係 政権復帰なら日本はどう対応?

2022年11月15日 06時00分

アメリカのトランプ前大統領=AP

 2大政党の拮抗が伝えられる米中間選挙。現地では次期大統領選への関心も高まっている。出馬が取り沙汰されるのが共和党のトランプ前大統領だが、気になることもある。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係だ。同氏は教団側にメッセージを寄せたほか、共和党のお歴々も教団側と接点を持ったとされる。そんな状況に岸田文雄首相はどう向き合うのか。世界情勢を左右しうるトランプ氏や共和党にも物申すのか。(特別報道部・木原育子、中山岳)

◆中間選挙では伸び悩んだが

 「痛い思いをするかもしれない」「あまり良いとは言えないようなことを暴露するかもしれない」
 多くの共和党候補が苦戦する中、トランプ氏は挑発的な言葉をぶつけた。
 矛先を向けたのは、フロリダ州知事のデサンティス氏。トランプ氏と距離を取りながら、中間選挙で実施された知事選で民主党候補に圧勝した。前大統領は自らの足元を揺るがしかねない政敵と見立て、警戒を強めたのだろうか。
 トランプ氏はツイッターが永久凍結され、国家安全保障に関わる最高機密が不法に持ち出されたとしてFBIによる家宅捜索も受けた。にもかかわらず、強い物言いは変わっていない。
 その同氏が強い関心を寄せてきたのが中間選挙だ。当初は民主党が劣勢との見方が大半だったが、ふたを開けてみれば善戦。一方の共和党は伸び悩んだ。
 国際ジャーナリストの春名幹男さんは「トランプ氏が前面に出すぎたことで、無党派層や若者層が民主党に流れた」とみる。象徴的なのはフロリダ州とペンシルベニア州。冒頭のデサンティス氏は民主党候補に約20ポイントもの差をつけて勝利したが、トランプ氏がてこ入れしたペンシルベニア州で共和党の上院議員候補も知事候補も敗れた。「トランプ氏が頑張るほど共和党は一体性を欠いた。自打球で傷を負った状態に近い」
 そんな中でも、トランプ氏は次期大統領選への立候補が取り沙汰されており、15日にも出馬を表明すると報じられてきた。
 明治大の海野素央教授(異文化間コミュニケーション論)は「党内ではトランプ氏主導のMAGAマガ共和党(『Make America Great Again』、米国を再び強くする)と、反MAGAの対立がますます激化する」と見通す。「民主党はトランプ氏に出馬してほしいのでは。勝利の公算が大きいからだ」

◆関連団体集会にメッセージ、出席、講演も

 影響力に陰りが見えるとの評だが、いまだ話題に上るのがトランプ氏だ。そこで気になってくるのが旧統一教会との接点になる。

旧統一教会友好団体のイベントで、ビデオメッセージを送る安倍元首相(「シンクタンク2022」のユーチューブチャンネルから)

 旧統一教会の友好団体「天宙平和連合(UPF)」のサイトによると、昨年9月の集会では安倍晋三元首相と共にトランプ氏もビデオメッセージを寄せた。教団を率いた故・文鮮明氏の夫人について「素晴らしい人物である韓鶴子博士に感謝したい」と切り出し、9分にわたり熱弁。「文氏と安倍氏はどちらも多大な功績に値する。素晴らしい仕事をした」と持ち上げた。
 今年8月の集会では、トランプ氏が改めてメッセージを送ったほか、ポンペオ前国務長官やギングリッチ元下院議長も出席。他の集会では、ペンス前副大統領やチェイニー元副大統領も講演している。いずれも共和党内の保守重鎮だ。
 上智大の前嶋和弘教授(米国現代政治)は「共和党にとって旧統一教会は敬虔けいけんなキリスト教の一派で、福音派とも親和性があり重なる。イメージとして悪くないのだろう」と話す。「UPFにとって共和党は日本信者向けの広告塔で、共和党の元政権関係者にとってはお小遣いが手に入る団体なのでは」とみる。
前のページ

おすすめ情報

社会の新着

記事一覧