参院選茨城 戦い終えて(下) 維新・佐々木里加 県南で「野党第一党」に 共産・大内久美子 かすんだ「再稼働反対」

2022年7月15日 07時42分

党代表の松井一郎(右)の応援を受ける佐々木里加=龍ケ崎市で

 「維新を野党第一党に!」。参院選中盤の六月二十七日、日本維新の会幹事長の藤田文武がJR取手駅前で声を張り上げた。ロシアのウクライナ侵攻など安全保障環境の変化に話題が及ぶと、「立憲民主党は政権を担っていく能力がない。厳しい現実を直視して議論することはできない」。現在の野党第一党、立民に矛先を向けた。
 維新が茨城選挙区(改選数二)に擁立した新人佐々木里加は選挙期間中、県南地域を中心に遊説の日程を組む。県組織「茨城維新の会」代表の石井章が取手市に拠点を置き、維新の地盤が一定程度あることに加え、東京に通勤・通学する「茨城都民」が比較的多く、無党派層の票を期待できる地域でもあるからだ。「野党第一党」への足掛かりを築くため、ここを重点的に攻める戦略だった。
 佐々木の応援には、藤田に加え、党代表で大阪市長の松井一郎、共同代表の馬場伸幸と、幹部が大阪から続々と県内入り。二十八日に龍ケ崎市でマイクを握った松井は、今の与野党の関係を「なれ合い」と断じ、「自民をぴりっとさせる役割をさせて」と呼びかけた。維新こそ野党第一党にふさわしいという自負がにじんでいた。
 佐々木は、落選はしたものの、共産候補を押さえて十五万九千票を獲得。茨城選挙区で維新が次点の三位に浮上したのは初めてだ。県南などの十一市町では自民新人の加藤明良に次ぐ二位となり、局所的には「野党第一党」に。選挙対策本部長の武藤博光は「これまでの維新では届かなかった名誉ある得票」と胸を張った。
 維新は、十二月に想定される県議選や来春の統一地方選で、県内各地に候補者を立てる構えだ。特に県議選では初の議席確保を射程に入れる。
 一方、三年前に続いて立候補した共産新人の大内久美子は、前回を二万三千票余り下回る十万六千票弱で四位に沈んだ。共産の県内比例票も六万三千票弱と、前回の四分の三ほどにとどまった。

党委員長の志位和夫(右)とともに支持を訴える大内久美子=水戸市で

 今回、立民と国民民主党が推薦した無所属の堂込(どうごみ)麻紀子が、日本原子力発電東海第二原発(東海村)の再稼働についてあいまいな姿勢に終始。大内は明確に再稼働反対を訴えることで差別化を図り、無党派層や立民支持層をも取り込もうとした。
 だが、選挙戦で有権者の関心を集めた争点は、主に物価高や、ウクライナ情勢を踏まえた外交・安保だった。原発再稼働問題はかすんだばかりか、むしろエネルギー価格高騰から再稼働を求める世論さえ強まり、共産の狙いは外れてしまう。
 安保を巡っても、自民党や維新が唱える「敵基地攻撃」「防衛費増額」が一定の賛同を得る半面、平和外交を説く共産の訴えは「全ての県民には届かなかった」。党県委員長の上野高志は、そう言って肩を落とした。(林容史、出来田敬司)=敬称略

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