生中継250試合が白紙…近藤祐司アナ、おなじみ“英語絶叫”生かしYouTubeで情報発信

[ 2020年4月12日 05:30 ]

コロナで野球が消えた【実況アナウンサー】

YouTubeチャンネル「Ugk Tube!」の撮影に臨む近藤氏(左)と次男(本人提供)
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 新型コロナウイルスの感染拡大により プロ野球が延期となり、中継を担うテレビ業界も打撃を受けている。特にテレビ局に所属しないフリーアナウンサーはスケジュールがいったん、白紙になった。今できることは何か。CS放送「GAORA」で日本ハム主催試合の実況を担当するスポーツアンカー・近藤祐司氏(46)は、新たな形で情報発信している。

 桜の季節を迎えても、プロ野球中継は始まらない。中継がなければ、実況アナウンサーも働き場所がない。深刻なのはフリーアナウンサーで、15年から「GAORA」で日本ハムの主催試合を担当している近藤祐司氏もその一人だ。「ここまでスポーツが止まってしまうのは、過去に戦時中だけ。生中継250試合の仕事が白紙になりました」と嘆く。

 近藤氏は高校まで9年間過ごした米国で培った英語力を生かし、3者凡退を「ワン、ツー、スリー」、本塁打を「イッツ、ゴーン!」とメジャー風に表現することで、野球ファンにはおなじみ。今季も日本ハム戦70試合以上の実況を予定していたが、白紙に。このほかに担当するNFL(日テレジータス)、NBA(RakutenTV)、MLB(J SPORTS)も、中継の見通しが立たない。東京五輪でも、馬術会場で日本語と英語の両方で場内アナウンスを担当する予定だったが、来年に延期となり、それもなくなった。

 そこで、情報発信を続けるため、近藤氏は自身のユーチューブ・チャンネル「Ugk Tube!」をこの春に立ち上げた。米国のスポーツサイトで気になる記事を紹介し、「スポーツと英語であなたにケミストリー(化学反応)!」がコンセプトだ。「iPhone11 Pro」で次男に撮影してもらい、テロップなどの動画編集は自ら担当。「全部で2、3時間かかり、日頃のテレビ局スタッフの方々のありがたみが分かります」と試行錯誤中だが、チャンネル登録数は11日時点で1650人とまずまず。同時通訳も可能な英語力と情報の早さが好評だ。

 「スポーツで日本を豊かに」という信念を持ち、米国でスポーツキャスターを意味する「スポーツアンカー」を名乗る近藤氏。最近は過去のワールドシリーズなど名勝負の実況中継の仕事が入り「100あった仕事がゼロになり、今は30くらい」と言う。世界を襲うコロナ禍の先は見えないが、近藤氏は、“今だからできること”にチャレンジしている。 (柳原 直之)

 ◆近藤 祐司(こんどう・ゆうじ)1974年(昭49)1月21日生まれ、京都府出身の46歳。立命館大アメリカンフットボール部ではDBとして活躍し、日本代表にも選出。94年甲子園ボウルでは日本一に輝き、最優秀守備賞も受賞した。卒業後は同校コーチに就任し、Xリーグ・アサヒ飲料でもプレー。現役引退後の97年にNFLの解説、実況を開始した。株式会社「UGK Sports&Communications」代表。

 ≪「J SPORTS」も“空白”に苦慮 全て再放送に切り替え対応≫国内最大の4チャンネルを駆使したスポーツ専用チャンネル「J SPORTS」も番組編成に苦慮している。同局では今季、広島、中日、楽天、オリックスのホームゲーム全試合を中継予定だったが、開幕延期で「空白」が生まれてしまっている。同局関係者は「試合がないので、過去のアーカイブなど全て再放送に切り替えて対応している。今のところ、4月いっぱいまで(番組の)編成はない」と明かした。

 当初生中継する予定だったスケジュールは、過去の試合や今春の練習試合、侍ジャパンの再放送、またダーツやサッカー、ラグビーなど他競技の再放送などで埋めている。現場では選手への取材も自粛となっているため「インタビューなど新たな収録もできない。非常に苦労している」と頭を悩ませている。

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