教育・子育て

松本市内中学校の登山離れ加速

 松本市内の中学校の伝統行事である夏の学校登山が減っている。登山の代わりに、山岳景勝地や県外の観光地などに出かけて自然体験や探究学習をする例が目立ってきた。今年は公立20校(組合立を含む)のうち7校が登山、13校が体験学習などを計画。新型コロナウイルス禍前は7割が登山を実施していたが、行事を見直す動きが一気に進んだ。

 昨年まで乗鞍岳登山をしていた丸ノ内中は今年、探究学習の「飛騨高山散策」に切り替え、6月上旬に2年生88人が岐阜県高山市へ出かけた。「全員が参加できる行事」を検討し、身体面などで不安がある生徒も皆と活動できる形にした。飛騨の祭りや伝統工芸に触れた神山創史朗さん(13)は「知らない街を探究し、友達といろいろなことを学ぶことは新鮮だった」と話す。
 市内中学校ではコロナ禍以前から、1泊2日で北アルプス・燕岳などを目指す本格登山から、生徒や教職員の負担軽減などを理由に日帰り登山に変える動きがあったものの、令和3年はまだ14校が登山を計画していた。しかし半数以上が感染状況や悪天候のため中止し行事の見直しにつながったとみられる。梓川中は今年は市内の山岳景勝地・上高地の自然体験学習を実施する。
 一方、登山を続ける学校もある。大野川中と安曇中は地元の奥穂高岳(3190メートル)を目指す登山を18日から2泊3日で計画。山岳ガイドや医師が同行し、今年は生徒の体力に配慮し「登頂組」と「周遊組」に分けた。
 県教育委員会によると、県内の公立中学校は、平成21(2009)年度は9割強が登山をしていたが、10年後の令和元年は6割に減り、コロナ禍でさらに減った。県山岳総合センター(大町市)の傘木靖所長は「一度中止した学校登山を再開することは大変なこと。時代の流れで『登山が絶対』ではないが、教材の一つとして魅力を再発見してもらえるよう発信したい」と話している。