四国アイランドリーグplus(四国IL)の2020年シーズンが10月25日に終了した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開幕が約3カ月遅れた今季。関係者は対応に追われたが、レギュラーシーズンは当初予定の各球団76試合を実施し、ドラフト会議で指名を受けるなどして日本野球機構(NPB)に4選手を送り出した。リーグを運営する「IBLJ」の馬郡健社長に、激動の今季を振り返ってもらった。
(聞き手、運動部・西森健太)
―シーズン開幕が大幅に遅れた。どんな思いだったのか。
「せっかく四国ILに挑戦してくれた選手に野球をやらせてあげたい思いの一方、感染を拡大させてはならず、ジレンマを抱えていた。ただ、開幕できなければ、今まで15年間培ってきたものが一度途切れてしまう。それは地元で協力、支援してくれているたくさんの人たちに申し訳ない。試合が全くできなくなるのだけは避けたかった」
―開幕日が6月20日に決まってからは。
「感染防止のために一定のルールを決めて動き始めた。正直なところ現場のスタッフも私自身もレギュラーシーズンを全て消化できるか不安だった。試合数が少し減る程度で済めば100点。どう進めていくのが最善の選択かを考えていた」
―開幕1カ月を待たずに高知の選手1人の感染が判明したが、1週間後には公式戦を再開した。
「感染者を出してしまったが、その後の対応は準備していたので、なんとかレギュラーシーズンを再開できた。多くのご意見、ご批判をいただいたことは事実。そんな中で、徐々に試合を行い続けることへの理解を獲得できていったと思う」
―無観客から有観客へと移行したが、客足は遠のいたままだった。
「観客がいない球場は物足りなかった。やはり多くの人に応援してもらいたい。コロナの影響があってもなくても、リーグ、球団が真剣に考えていかなければいけない問題だ。観客に楽しんでもらえる環境を、もう一度ゼロからつくっていきたい」
―今年はリーグから4選手がNPBの舞台へと羽ばたいていった。
「一定の成果は出せたと考えている。これは来季に向けたリクルートにもつながり、良い選手が集まる循環のきっかけになるはずだ」
―新たに北海道や九州で独立リーグが誕生したことについては。
「チーム数が増えて選手が分散することで、独立リーグ自体のレベルの低下などが叫ばれると思う。独立リーグが(他団体より)下に見られることがないよう、野球のレベルは常に上げていかなければいけない」
―来季のビジョンは。
「コロナでリーグ、各球団が財務的にも大きく痛んでいる中、まずはいつも通りのことをやれるようにする。3月末に開幕し、(今年参加を見送った)プロ野球秋季教育リーグに復帰したい。また、来季に向けた動きで一つ考えているのは、観客が来やすい週末に試合を多く組むこと。今年挑戦したかったが、コロナでできなかった。球団だけでなく、リーグも主体的に動き、観客を取り戻していきたい」
馬郡 健(まごおり・たけし) 慶応大法学部卒。電通を経て米国の企業でシステム開発に取り組む。 2017年12月に東京のIT企業社長。四国ILの経営に長年携わった鍵山誠氏との出会いをきっかけに、19年11月からIBLJ社長、20年3月から日本独立リーグ野球機構会長も務めている。東京都出身。41歳。