プロボクシング日本スーパーウエルター級タイトルマッチが8日、東京・後楽園ホールで行われた。挑戦者で同級6位の出田裕一(38)=三迫=が、王者の川崎真琴(38)=RK蒲田=に9回1分52秒TKO勝ち。プロ18年目での王座初挑戦で新王者となった。
勝利が決まった瞬間、出田は静かに喜びをかみしめた。代わりに陣営と応援団の人々は飛び上がって喜び、新王者を祝福した。
「うれしいの一言に限るけどいろんな思いがあった。感謝の思いだったり。最初から打ち合おうと決めていた」
1回から前に出てプレスをかけ、接近戦に持ち込んだ。1回に左目上、3回には右目上をともにバッティングでカットしたが、頭をつけての左右のフック、アッパーと手数で完全に上回りペースを握った。5回終了後の途中採点でジャッジ2人が49-46、残り1人が48-47で出田を支持した。
「(練習で)やってきたことは、客観的なジャッジの見た目も良いんだなっていうのは自信につながった。そのまま後半も同じような闘い方でいくと決めた」と接近戦を貫き、「出田コール」も起こった。9回に連打を繰り出したところで、レフェリーが川崎のダメージを考慮して試合を止めた。
2012年3月から6連敗して14年に一度現役を引退したが「まだやりきれていない。ボクシングをやってきた証しを残したい」と、閉鎖したヨネクラジムから三迫ジムへ移籍して18年2月に現役復帰。しかし、その後も5連敗した。「負けてはいたが、自分の中で成長を感じられていた」という手応えと、この日も会場で長女の茉白(ましろ)ちゃん(2)と応援した妻の彩子さん(35)の「まだできる。まだ成長している」という励ましの声に支えられ、現役を続けてきた。
所属ジムの三迫貴志会長(49)は「試合で負けても、何の迷いもなく数日すると練習に来ていた」と出田のひたむきさと努力を認めてはいたが、遠慮がちに黙々と1人で練習していた出田に「違うよ。チームで勝つんだよ」と叱責。担当の横井龍一トレーナーだけでなく、加藤健太チーフトレーナーもミットを持ち、一緒に分析して作戦を立てるなど、三迫ジム一丸となって試合に臨んだ。
出田は「三迫ジムでチームで練習をやってきた。皆の気持ちを背負っている分、最後まで闘いきれた。その分、うれしさが自分だけの感情じゃないので」と笑顔。「変わらず感謝を持って、皆さんの気持ちに応えられる試合をしていきたい」とまずは、来年の指名試合での初防衛を目指す。
プロ戦績は出田が33戦16勝(9KO)16敗1分け、2度目の防衛に失敗した川崎が24戦13勝(2KO)9敗2分けとなった。