元貴ノ岩(左)の断髪式後のパーティーで、タレントの松村邦洋(中央)は元貴乃花親方の物まねを披露。右は千賀ノ浦親方 (撮影・菊本和人)
ギャラリーページで見る 暴力問題で現役を引退した大相撲の元幕内貴ノ岩のアディヤ・バーサンドルジ氏(28)=モンゴル出身=が2日、東京・墨田区の両国国技館で断髪式を行い、約370人がはさみを入れた。一昨年10月の別の傷害事件で貴ノ岩への加害者となった元横綱日馬富士(34)も参加したが、日本相撲協会を退職した前師匠の元貴乃花親方(46)=元横綱=は列席しなかった。
その言葉に反応した元貴ノ岩が、少しだけ振り返った。はさみを入れた元日馬富士が両手を肩へ置き、「頑張ってください」と小さく声をかけた瞬間だった。
平成29年10月の秋巡業中の宴席で、元貴ノ岩へ暴力をふるった傷害事件の加害者となった元日馬富士は同年11月、責任を取って現役引退に追い込まれた。だが、いまはこだわりはない。元日馬富士は「だから(ここへ)来ている。これからの方が長い。自分なりにできることがあれば応援したい」と出席を決めた。
当時は被害者だった元貴ノ岩の立場も一転した。昨年12月の冬巡業中、千賀ノ浦部屋の付け人に暴力をふるい、その引責で同月に引退を決断。協会には残らず、相撲界を去る。
元貴ノ岩も元日馬富士へのわだかまりは「ない」と言い切り、「これからはいろいろなことに挑戦していきたい。(相撲に携わる)機会があれば」と涙を見せず、前を向いた。土俵の思い出を「横綱、大関と対戦できたこと」と振り返った。
傷害事件の宴席に同席していた横綱白鵬、鶴竜も訪れたことに「(3人の横綱に)はさみを入れてもらってうれしかった」。同胞の人間関係は元のさやに収まった。