関西の議論

「シカ踏切」絶大な効果、逆転の発想が生んだ近鉄の接触事故対策

【関西の議論】「シカ踏切」絶大な効果、逆転の発想が生んだ近鉄の接触事故対策
【関西の議論】「シカ踏切」絶大な効果、逆転の発想が生んだ近鉄の接触事故対策
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 シカと電車の接触事故を減らそうと、近畿日本鉄道が導入した「シカ踏切」が絶大な効果を発揮している。運行時間帯はシカが嫌がる超音波で線路から遠ざけ、終電から始発までの夜間はそれを止め、自由に線路を横切れるようにするという画期的なシステム。奈良、三重両県の大阪線の一部に設置したところ事故件数が激減し、他の鉄道会社も試験導入を始めた。野生動物を排除するのではなく、人間との共存を目指す-。導入に至ったきっかけは、一人の鉄道マンがひらめいた「逆転の発想」だった。(藤木祥平)

超音波で侵入防止

 シカ踏切の仕組みはシンプルだ。線路沿いにステンレス製の「獣害防止ネット」(高さ2メートル)を張り、その一部にシカが横断可能な数十メートルの隙間をつくる。シカは日没から早朝にかけて移動するため、夜間や明け方の運行時間帯だけシカが嫌がる超音波を隙間に発信して侵入を防ぎ、電車が運行しない深夜は装置を停止させ自由に線路を渡れるようにする。

 線路を道路に例えるならば、獣害防止ネットはいわばガードレールで、超音波を発する装置は横断歩道の信号だ。シカにとって、超音波は「ジェット機の爆音のように聞こえる」(近鉄の担当者)という。

 野生動物との接触事故があれば、乗客の安全に気を配ることはもちろん、ダイヤの乱れや車両の損壊、死骸の処理、職員の負担などで鉄道会社は相当な痛手を被る。山間部などの路線が多い近鉄では、野生動物との接触事故は毎年200件以上にも上るというから深刻だ。

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