中国軍事情勢

厚いベールに包まれた人民解放軍サイバー部隊 「網電一体戦」構想で一体何を仕掛けようとしているのか?

 中国が次々と開発する中国版イージスやステルス戦闘機J(殲)20などの最新兵器。長足の進化を遂げる開発の背後には、人民解放軍のサイバー部隊による米国の軍事産業へのスパイ行為が指摘されている。だが、中国のサイバー部隊は厚いベールに包まれ、その全貌は分かっていない。平時から有事まで幅広い任務を負う同部隊の実力とは。(台北 田中靖人)

湾岸戦争が契機

 中国軍の運用構想の一つに「網電一体戦」がある。サイバー空間の攻撃手段と従来の物理的な電子戦の能力を一体として運用し、敵の戦闘力や兵力投射能力を妨害する概念だ。この構想では、戦力的に「非対称」な敵に対し、先制攻撃を行う重要性が強調されている。

 台湾の国防部(国防省に相当)が発行する雑誌「国防雑誌」の2011年6月の論文によると、中国軍がサイバー攻撃や電子戦の重要性を認識したのは、1991年の湾岸戦争。米軍は空爆に先立ち、イラク軍のネットワークにウイルスを侵入させて防空システムをまひさせ、大規模なジャミング(通信妨害)で指揮通信系統を遮断した。これに危機感を覚えた中国は、95年に中央軍事委員会の総参謀部第2部に「科学技術収集局」を設置。翌96年からは電子戦を軍事演習の科目に加えた。

会員限定記事会員サービス詳細