紫綬褒章

作家の川上弘美さん「違う世界見える瞬間書きたい」

紫綬褒章を受章する作家の川上弘美さん
紫綬褒章を受章する作家の川上弘美さん

 「今までの仕事を見て『がんばったね』と励ましていただく章で、ひとしおありがたいです。小説という分野に入ってこられた幸運を思い返しました」。紫綬褒章を受章した作家の川上弘美さん(61)は喜びを語る。

 中学・高校の理科教師を経て、平成6年に作家デビュー。映像化されたベストセラー『センセイの鞄(かばん)』のような恋愛物からファンタジーやSF色の濃い作品まで、日常の現実に非日常的な要素が混ざり込んでいく不思議な物語を描き続け、読者を魅了してきた。

 「私は本当にごく平凡な人間で、毎日起きて洗濯して掃除して仕事して夕飯食べて寝る…という暮らしをしているんですね。そういう中にいて、クラッと違う世界が見える瞬間がだぶん誰にでもある。それを書きたい、という気持ちは最初からありました」

 四半世紀に及ぶ創作活動の原動力は「とにかく小説が好き」なこと。優れた読み手として、芥川賞など文学賞の選考委員も務めてきた。

 規則正しく朝から夕方まで執筆する毎日。最近はその合間にテレビ体操をして運動不足を解消している。

 出版不況が叫ばれる昨今だが、人間が「物語を求める気持ちは変わらない」と悲観していない。「小説を一つ書くたびに筋肉がついて、違うものが書けるようになる。失敗してもいいから、無理なこと、何か新しいことをしたい」(海老沢類)

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 川上弘美さんは20日付で発表された紫綬褒章に決まった。

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