薬の供給「滞らないように」 被災の医薬品卸、製薬企業で復旧急ぐ

大きく亀裂の入った道路では復旧作業が行われていた=2日、石川県羽昨市(渡辺恭晃撮影)
大きく亀裂の入った道路では復旧作業が行われていた=2日、石川県羽昨市(渡辺恭晃撮影)

能登半島地震は医療用医薬品を医療機関や薬局に届ける医薬品卸企業の拠点にも被害をもたらした。倉庫では商品棚が倒れ、薬が散乱。今も揺れが続く中、医療機関への配送を最優先にして薬の整理を急いでいる。一方で、北陸地方はジェネリック医薬品(後発薬)をはじめ医薬品製造の集積地でもある。今後の薬の安定供給への影響を心配する声も業界関係者の間から上がっている。

商品棚は倒れ、薬が散らばり、その下にはシロップ剤など液状の薬が流れ出していた。

「これはダメだ」

北陸地方に多くの拠点を持つ医薬品卸「ファイネス」(金沢市)の物流本部長、笹倉徹さんの口から思わず言葉が漏れた。1日に震度6強の揺れを観測した石川県七尾市内の支店を2日になって確認すると、大きな被害を受けていた。

被災し、出社できない社員もいたため、他支店の応援も駆けつけ整理を続けてきた。傾いた棚の下で作業を続ける途中にも、震度5をはじめとする揺れがたびたび襲い、一時退去を迫られるなど復旧作業には時間がかかったという。3日夜には関連会社の「バイタルネット」(仙台市)から、悪路を走行できる車両が届き、正月休み明けの4日には医療機関への薬の配送を始めた。

ただ、被害が甚大な珠洲市、輪島市などの医院や薬局の中にはまだ連絡が取れないところもある。同社は石川県などとも連携しながら医薬品の配送を急ぎたいといい、笹倉さんは「命と健康を守る医薬品を滞りなくお届けする責任を果たしたい」と話した。

北陸地方にある製薬企業の工場でも被害状況の確認作業が急務となっている。在阪製薬企業の経営者は「北陸は日本有数の薬の製造工場の集積地。供給不安に影響が出ないか心配だ」と話す。

その中でアステラス製薬は富山県高岡市にある工場について年末休業からの稼働停止が続いており、現在、震災の影響を確認中としながら「現時点で医薬品の安定供給への影響はない」とした。

また、富士フイルム富山化学の富山市内の工場は当初、正月明けの営業開始日に想定していた4日の稼働は見送り、5日まで確認作業を続けた。

富山県内に工場、拠点を持つ後発薬大手の日医工は、被災状況の確認を急いでいるが現段階で大きな被害はないといい、3連休明けに予定している9日工場稼働に向けて準備を進めている。

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