対馬市長、最終処分場の調査受け入れない方針表明 「合意不十分」

長崎県対馬市議会の本会議に臨む比田勝尚喜市長(左)=27日午前
長崎県対馬市議会の本会議に臨む比田勝尚喜市長(左)=27日午前

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定を巡り、長崎県対馬市の比田勝尚喜(ひたかつ・なおき)市長は27日に開催された市議会本会議で、処分場選定に必要な「文献調査」の受け入れない方針を表明した。

比田勝氏は「熟慮した結果、調査を受け入れないとの判断に至った。この問題で市民が分断されたことをみると、合意形成が十分ではないと感じた。観光などへの風評被害も懸念される」と説明。

「文献調査で適地と判断されると次の段階に進まざるを得なくなることも想定される。技術や安全性についても将来的に検討すべきことが多い。将来的に地震などによる放射性物質の流出のおそれも否定できない」とした上で、「この見解をもってこの問題については終止符を打ち、市民一体となれる政策を講じていく。来年3月の市長選に立候補する」と述べた。

対馬市では建設業団体が今年6月、調査受け入れを求める請願を市議会に提出。市議会は9月12日の本会議で同請願を賛成10人、反対8人の僅差で採択。一方、市民団体や漁業協同組合が提出した反対の請願6件を賛成少数で不採択とした。このため、市長がどう決断するか注目が集まっていた。

市議会は同日閉会。比田勝氏は午後に記者会見を開き、判断の詳しい理由を説明する。

「核のごみ」とも呼ばれる高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定をめぐっては、原子力発電環境整備機構(NUMO)が平成14年に調査受け入れの公募を開始した。

文献調査は3段階ある処分場設置に必要な調査の第1段階。北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で令和2年11月から行われている。(牛島要平)

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