ウクライナ南西部に隣接するモルドバでロシア系住民が過半数を占める東部地域の「分離・独立戦争」が勃発したのは1992年3月。ソ連崩壊前後に多発した民族衝突の一環だった。それから30年。モルドバはウクライナ同様、親露、親欧米の間で揺れ動き、現在は女性のサンドゥ大統領の親西側政権となったが、プーチン露大統領のウクライナ侵略で「凍結された紛争」は再び熱戦がぶり返す危機が迫っている。
分離地域はドニエストル川東岸とウクライナ国境に挟まれた南北に細長い自称「沿ドニエストル・モルドバ共和国(略称PMR)」。国際的にはロシアも含めどの国も国家承認していない。ここに92年7月の停戦以降、「平和維持」名目で常駐する約1500人のロシア軍が、ウクライナ東部から南部への陸上回廊構築の援軍として侵攻する可能性が指摘され始めた。