露下院、親露派の「国家承認」案を可決 法的拘束力なし

ロシア・ペスコフ大統領報道官(ロイター)
ロシア・ペスコフ大統領報道官(ロイター)

【モスクワ=小野田雄一】ウクライナ情勢をめぐり、ロシア下院は15日、ウクライナ東部を実効支配する親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(いずれも自称)を国家承認するようプーチン大統領に求める議会決議案の採決を行い、賛成多数で可決した。タス通信が伝えた。露メディアによると、決議に法的拘束力はなく、可決がロシアによる親露派の即座の国家承認にはつながらない。

決議案は1月に露共産党が下院に提出。決議案の審議が予定された14日、政権与党「統一ロシア」も同様の決議案を下院に提出した。共産党案は議会単独での採決を提案したのに対し、統一ロシア案は採決に先立ち露外務省の見解を聞くことを提案。下院は15日、どちらの案を採用するかを決める投票を行い、共産党案を可決した。今後、決議はプーチン大統領に送付されるという。

タス通信によると、ペスコフ露大統領報道官は15日、親露派支配地域の国家承認について「いかなる公式の決定もなく、議論も行われていない」と慎重な姿勢を示した。親露派支配地域の国家承認は、ウクライナ東部紛争の和平合意「ミンスク合意」と矛盾する。プーチン政権は親露派支配地域を国家承認することにより、ロシア側に有利な同合意を破棄する口実をウクライナ側に与える事態を警戒しているとみられる。

ただ、プーチン政権が、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の確約などに関する米欧との協議や、ミンスク合意の履行をめぐるロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国協議が行き詰まった場合、議会決議の存在を口実に、親露派支配地域を国家承認して事実上のロシアの支配下に置く可能性も排除されていない。

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