「リトルプリンス」誰もが魅力的な、星の王子さまの世界

星の王子さま(左、加藤梨里香)と、キツネ(井上芳雄)
星の王子さま(左、加藤梨里香)と、キツネ(井上芳雄)

「大切なものは、目には見えないんだよ」というセリフは、あまりにも有名。サン=テグジュベリのベストセラー「星の王子さま」を原作としたミュージカルで、示唆に富む寓話的な世界が、ファンタスチックに展開する。

1993年に音楽座ミュージカルで初演。東宝が製作、上演した今作の演出は小林香で、プロジェクションマッピングなどを巧みに組み合わせ、一種の白昼夢のように仕上がっている。

砂漠に不時着した飛行士(井上芳雄)は、宇宙に浮かぶとある小惑星から来た王子(加藤梨里香)と出会う。王子の星はとても小さく、火山が3つとバオバブの木、1輪の花(花總=はなふさ=まり)が咲いているだけ。花とけんかした王子は、旅に出て、さまざまな星をめぐって地球にたどり着き、ヘビ(大野幸人)やキツネ(井上芳雄)と知り合ったと話す…。

いずれの役柄も魅力的に演じられている。柔らかく素朴な筆致でつづられた物語は、俳優が演じることによって、地に足着いた生々しさと立体感を得る。

「一度疑問を抱くと死ぬまで諦めない」うっとうしさとかわいらしさを併せ持つ加藤の王子。井上演じる飛行士は、王子と過ごして、すさんだ心や寂しい気持ちが和らげられていく。井上はキツネも演じており、王子と友達になる場面では、生き生きと動き回り、見ているこちらもうれしくなってしまう。花總の花は、登場するだけで空気を変えてしまう魅力があり、理不尽な振る舞いすら愛らしく、王子が心を砕くのにふさわしい存在だと納得させた。大野のヘビは、ぬめるような動きで観客の心をざわつかせ、ミステリアスで、原作以上の印象を残す。

そのほかにも、魅力的なキャラクターが実体を得て舞台上を動き回り、〝心の目〟で見ることの大切さを伝えている。

王子役は、初演から王子役を演じている土居裕子とのダブルキャスト。

31日まで、東京都千代田区のシアタークリエ。問い合わせは東宝テレザーブ、03・3201・7777。2月4日~6日は名古屋市の日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。(三宅令)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

星の王子さま(左、加藤梨里香)と、ヘビ(大野幸人)
星の王子さま(左、加藤梨里香)と、ヘビ(大野幸人)
花(左、花總まり)と星の王子さま(加藤梨里香)
花(左、花總まり)と星の王子さま(加藤梨里香)

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