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小栗旬、8作目の大河は「役者人生の区切り」

小栗旬 撮影・加藤圭祐
小栗旬 撮影・加藤圭祐

「地味」「影の権力者」…。鎌倉幕府の2代執権、北条義時のイメージは決して良いとはいえない。そもそも、何の印象も持たない人も多いだろう。

「自分もあまり知りませんでした。名前が歴史の表舞台に出るのは鎌倉時代が始まったくらい。では、それまで北条家ではどういうことが起きていたのか。今回はそれを大切に描いています。義時にはダークなイメージもありますが、それが変化していくかもしれません」

今作で演じる義時は「表舞台に出たくない」「周囲に振り回される」タイプ。それが、後に初代将軍となる源頼朝と関わることで、「決断しなければならない環境」に追い詰められていく。「義時がどうにかしないと鎌倉幕府は成り立たない。親父(時政)と兄貴(宗時)は、特にポンコツ。愛すべきポンコツです」

ただし、ホームドラマはおそらく序盤まで。陰惨な政争を扱う中盤以降はテイストが変わるのだろう。見どころは最終的な勝者である義時の「葛藤」だ。

「『あれ、どうしてこうなっちゃったんだっけ』『あの頃に戻りたいなあ』…。北条のみんなはこういう思いを持っていく。(1話では)あんなににぎやかで楽しそうだった家族が、何でこんな風にならなきゃいけないんだろう、と。それでも先に進まないといけない。この部分は大切にやっていきたいです」

撮影に当たり、伊豆の北条氏邸跡や鎌倉の鶴岡(つるがおか)八幡宮などゆかりの地を訪ね歩いた。鎌倉時代の歴史書「吾妻鑑(あずまかがみ)」をはじめ、さまざまな史料や創作物にも目を通す。大河ドラマの撮影は長丁場。「撮影が始まってからこの半年、ずっと義時という人のことを考えている」という。

「こういう環境はほかにはない。俳優として豊かな時間を過ごしています。少し年を取ってからの義時がどういう行動を取り、戦うのかも楽しみな部分です」

今年12月に40歳の節目を迎える。主演として臨んでいる8回目の大河ドラマを「一つの区切りになる作品」と語る。

「20代、30代を役者人生の第1章とすれば、『第1章の終わり』。これから40代になり、また違った章が始まったらいいな、と。まずはとりあえず、健康に大河ドラマを乗り越えたい。そうすれば、今までの俳優人生で得られなかったものがきっと手に入る年になると思います」

視線は真っすぐに前を見据えている。そこに惑いはない。(本間英士)

おぐり・しゅん 昭和57年生まれ。東京都出身。ドラマ「信長協奏曲」(フジテレビ)「日本沈没-希望のひと-」(TBS)、映画「ルパン三世」「銀魂」「罪の声」など主演作多数。昨年、米映画「ゴジラvsコング」でハリウッドデビュー。「義経」「天地人」「西郷どん」など、NHK大河ドラマにも多く出演。今作での勝負メシは、乗馬の練習中によく食べたという「日本そば」。

「鎌倉殿の13人」はNHK総合、日曜午後8時。

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