米家電見本市「近未来」の仮想現実や自動運転が続々

米ラスベガスの家電・IT見本市「CES」で披露されたソニーの電気自動車(EV)=4日(塩原永久撮影)
米ラスベガスの家電・IT見本市「CES」で披露されたソニーの電気自動車(EV)=4日(塩原永久撮影)

【ラスベガス(米西部ネバダ州)=塩原永久】仮想現実(VR)や自動運転といった「近未来技術」の開発が加速している。米ラスベガスでの家電・IT見本市「CES」で4日、メーカーによる関連事業の発表が相次いだ。新型コロナウイルス禍が後押ししたデジタル化の波を受け、新技術の実用化と市場拡大は「思いのほか早くなる」(主催者)との見方があり、大手企業と新興勢力が入り乱れた競争が激化する気配だ。

仮想空間、よりリアルに

オンラインの仮想空間で、離れた場所にいる人々が会話したり、ゲームなどを疑似体験したりするVRは、5日から一般公開される今回のCESで主要テーマに急浮上している。

パナソニックが事業への本格参入を表明し、専用のゴーグル型端末を発表。キヤノンも4日、撮影した人物の分身「アバター」を仮想空間に作り出すためのソフトウエアを、年内に発売すると表明した。コロナ禍でビデオ通話が浸透したが、人々の「結びつきへの要求」(キヤノン米国法人首脳)が強まっているとみてVR事業を強化する。

VR関連市場は将来的に1兆ドル(約115兆円)を上回ると見込まれ、デジタル世界と実体験の融合を目指す商品開発も進んでいる。

スペインの新興企業「OWO」はVRゲーム向けのベストを出展。着用した人は、ベストに組み込まれた装置によって、ゲームに連動して腕をつかまれたり、抱き着かれたりする感触を疑似体験できるという。

ソニーがEV新会社

ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は4日、電気自動車(EV)事業の新会社「ソニーモビリティ」を今年春に設立すると発表した。「未来への果敢な一歩だ」と述べ、EVの市場投入を本格検討する。

人工知能(AI)やロボット技術を駆使し、ドライバーの運転を支援する機能を投入。将来的には運転手を必要としない自動運転も視野に入れているとみられる。米IT大手のアップルも自動運転のEV参入が取り沙汰され、異業種間の開発競争が活発化している。

一方、米農業機械大手ディア・アンド・カンパニーは4日のCESで、農地で使う完全自動運転のトラクターを年内に発売すると発表した。スマートフォンで操作し、人手を減らせるとアピールする。米国ではコロナ禍を受けて人手不足が深刻化。ドライバーを必要としない自動運転技術は、物流分野でも注目度が高まっている。

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