ソウルからヨボセヨ

宗教化した慰安婦運動

ソウル市内で記者会見する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の尹美香・前代表(共同)
ソウル市内で記者会見する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の尹美香・前代表(共同)

 韓国で元慰安婦の支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」をめぐり数々の疑惑が報じられているが、韓国内では批判がはばかられてきた聖域に踏み込んだと評価されている。

 これには驚いたが、それ以上の驚きは、正義連の前代表を批判し、疑惑追及の糸口を作った元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さん(91)に左派層から「李さんのパワハラにうんざりする」などとバッシングが浴びせられていることだ。

 李さんが保守地盤の大邱(テグ)の出身であることから「大邱らしい」と皮肉る人格攻撃もある。元慰安婦本人への批判は聖域どころかタブーでなかったのか。

 慰安婦問題研究を続け、元慰安婦への名誉毀損(きそん)罪で公判中の女性教授は、支援団体はこれまでの運動そのものが目的化し、一種の「宗教になった」とネット上で分析。元慰安婦の「おばあさんへの関心」より正義連などが設置した慰安婦像への「熱気が高かった」と指摘した。

 いつしか元慰安婦は脇に追いやられ、慰安婦像が「ご本尊」化していたわけだ。日韓の歴史問題で客観的事実より「正義」の名の下、理念を優先させる韓国側の姿勢が目立つ。今回の騒動が、当事者や事実より「正義」を金科玉条にする危うさに韓国社会が気づく契機になればと願う。(桜井紀雄)

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