プロ野球延期 虎愛貫くサンテレビ「忘れないで…」 半世紀の長寿番組足踏みも失せぬ野球愛

タイガースの攻撃が始まる7回裏を前に、おなじみのジェット風船が舞う甲子園球場=令和元年7月23日、兵庫県西宮市(松永渉平撮影)
タイガースの攻撃が始まる7回裏を前に、おなじみのジェット風船が舞う甲子園球場=令和元年7月23日、兵庫県西宮市(松永渉平撮影)

新型コロナウイルスの感染拡大で、プロ野球の開幕時期が見通せない状態が続いている。これに伴い、兵庫県の独立系放送局「サンテレビジョン」(神戸市)で、半世紀続く阪神タイガース戦中継番組「サンテレビボックス席」も、スタートを切れずにいる。どれほど試合が延びても終了まで放送する姿勢に、ファンの支持も厚い看板番組だ。タイガースが強いときも弱いときも、喜怒哀楽をともにしてきたファンの思いに応えようと同局の奮闘は続く。

番組は昭和44年の開局以来から放送している。地上波では試合途中から始まったり、終わりまで中継しなかったりする放送局もあるが、最初から最後までの完全生中継が売り。判定をめぐる抗議や延長で翌日未明まで続いた試合も、試合終了まで放送した。解説陣の自由な物言いも、ファンにはおなじみだ。

プロ野球の3月20日開幕を前提に、同局は例年通り、ナイターの開始時間にあたる午後6時から約3時間半の時間枠(月曜を除く)を用意した。しかし、開幕は延期。今も見通しが立たないままだ。

プロ野球開幕と阪神タイガース戦の中継に備えるサンテレビの車両(サンテレビジョン提供)
プロ野球開幕と阪神タイガース戦の中継に備えるサンテレビの車両(サンテレビジョン提供)

平成23年の東日本大震災で開幕が遅れた際は、中継予定への影響が数試合にとどまっただけに、今回は前代未聞の事態となっている。「毎年シーズンオフも熱く取材し、局内の気持ちも高まって開幕を迎える。高まった熱の持って行き場がないという感じ」(同局関係者)。開幕しても、試合数が減ればどれだけ中継できるかも不透明だ。

一方で、開幕を待つファンの気持ちに応えようと、今月24日夜から5週にわたり雨天中止などの際に使う「雨傘番組」で、名勝負として語り継がれる試合のダイジェスト番組「虎辞書(とらじしょ)なる!!~あの興奮をもう一度~」の放送を決めた。現役時代の和田豊選手や若き新庄剛志選手が活躍した、平成6年5月13日のヤクルト戦などを放送する予定だ。

甲子園球場(兵庫県西宮市)でのホームゲームを中心に3400試合を超える中継実績を持つ同局のたまものともいえるダイジェスト番組。宣伝を担当する西岡大貴さん(28)は「この季節、サンテレビといえばタイガース。サンテレビを忘れないで…」としつつ、「開幕を待つ、すべての野球ファンに見てもらいたい。タイガース寄りの中継に文句を言いたくなる人もいるでしょうけれど」と話している。(渡部圭介)

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