関西の議論

泳ぐイノシシ、琵琶湖にも…「源氏落ち武者の島」に渡って定住、深刻被害も打つ手なし

 そんな島が近年、本来は生息していなかったイノシシに荒らされている。小川さんは「有効な対策は分からない」と嘆く。地区住民たちが話し合い、今年から畑の周りを柵で囲う対策も行っているが、費用がかさみ、生活の負担にもなるという。

 島の高齢化率は60%。高低差の激しい土地が多く、島民だけで本格的な獣害対策を行うのは難しい。被害を受け、県と同市は28年に山と畑の間に柵を設けた。捕獲用の檻(おり)も3つ設置されている。ただ島内に狩猟免許を持つ人はおらず、島外の猟友会が管理しており、これまでに捕獲実績はないという。

 自治会長の北昇さん(49)は「島民でできる対策は限界。イノシシが定着する前に駆除できればいいのだが…」。市は「住宅地への被害も考え、猟銃での駆除はしない方針で、檻による捕獲以外の対応は難しい」とする。

 それにしてもイノシシはなぜ、2キロも泳いで突如島にやって来たのか。

欧米では「グッド・スイマー」

 平成26年の環境省の自然環境保全基礎調査によると、国内のイノシシの生息分布は昭和53年に比べて約1・7倍に拡大。平成27年度の頭数は94万頭(推定値の中央値)と、25年間で約3倍になった。

 離島に現れる「泳ぐイノシシ」を研究している奈良大の高橋春成(しゅんじょう)名誉教授(人文地理学)は、イノシシ増加の原因について「耕作放棄地の拡大」や「温暖化に伴う積雪地の縮小」など複合的な要因があるとみる。

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