続教育漢字考

《20》4字一体化の「辯明」聞きたい

選抜高校野球で初優勝して喜ぶ智弁学園。正式表記は「智辯学園」
選抜高校野球で初優勝して喜ぶ智弁学園。正式表記は「智辯学園」

 辯護士、辨理士、花瓣は弁護士、弁理士、花弁と表記-。「辯、辨、瓣」と【廾=にじゅうあし】「弁=小学5年で学習」は本来、別の字だが、昭和21(1946)年の当用漢字表で3字とも「弁」と書きかえることになった。

 新字体になって、「辯、辨、瓣」を書き間違える心配がなくなった。「よく似ていてまちがいやすい漢字をわかりやすくしたといえるだろう」(阿辻哲次『戦後日本漢字史』)、「〈辯〉〈辨〉〈瓣〉の複雑を思うと、戦後生まれでよかったと安堵しています」(財前謙『字体のはなし』)など、漢字改革を評価する声がある。

 一方で、弊害も。たとえば「弁言」という言葉。弁言は「序文」「はしがき」、旧字体の辯言は「巧みな言葉」「口先だけ」と全く違う意味で使われてきた。それが「弁言」に統一され、もとの意味が分かりにくくなった。

 書きかえは古典文学でも進む。中国文学者の高島俊男氏は「戦後字体に変えて本にするというのがそもそもまちがいなのだが、どうしてもやるなら、すくなくともこうした問題にだけでも注意し適切に処理しなければならぬのだが、それをやっていない」(『漢字と日本人』)。白川静氏も「4字を一体化することは、無理な話」(『字統』)と、手厳しい。

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