外信コラム

北京春秋 おばさんパワー及ばず

 ニューヨーク市場で金価格が20%暴落した4月中旬、突如巻き起こった中国の金買いラッシュで相場が一時、持ち直した。「中国のおばさんパワーがウォール街を負かした」(広州日報紙)と、中国国内メディアの鼻息は荒かった。

 1オンス(約31グラム)=1500ドル台後半だった金価格が200ドル暴落し、全国の貴金属店には純金や金製品を購入する行列ができた。なんと「10日間に1千億元(1兆6000億円)のマネーが金市場に流れ込んだ」(同紙)という。

 金の先安を予測したウォール街の投資銀行、ゴールドマンサックスも、「しばらく空売りをやめる」と表明したほどの勢いだった。

 しかし、中国の中高年女性パワーも世界相場を変えるほどの力はなかった。相場は一時1500ドル近くまで戻したが、今月17日には再び1300ドル台に落ち込んでいる。さらなる下落予測も出て、貴金属店の店頭は閑古鳥が鳴いている。

 金下落の一因は日米欧の金融緩和で、先進国のマネーが上昇幅の大きい株や債券にシフトしているためだ。

 だが中国の証券市場は、あまたの不正取引で信用を失っている。そこで力を入れた金投資でも、おばさんたちは再び痛手をこうむりそうだ。(山本勲)

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