レーダー照射

首相が中国への抗議指示 現場では粛々と回避措置

 中国海軍艦艇による射撃管制用レーダーの照射を受け、安倍晋三首相は万全の対応と中国側への抗議を指示した。1月19、30両日という短期間に立て続けに照射されたことは、到底看過できないためだ。政府としては今後も同じような威嚇には粛々と回避措置をとり、外交面では自制を求めることで、中国側の不当さを国際社会に訴えていく考えだ。

 「自制を求めないと大変心配な状況になる」

 小野寺五典防衛相は5日夜の記者会見でレーダー照射の危険性を繰り返し訴えた。「攻撃意図ありとのメッセージ」(自衛隊幹部)ともいえるレーダー照射だけに当然の懸念といえる。

 防衛省は先月30日の時点でレーダー照射について首相官邸に報告。首相は「国民と国際社会に隠す話ではない」と判断し公表を指示した。公表にあたり詳細なデータ分析・検証で事実関係を固めたのは、「中国側が『ぬれぎぬ』と言いがかりをつけてくる」(政府高官)ことを念頭に反論の余地を残さないためだ。

 レーダーを照射された際、海自艦艇とヘリは回避行動をとった。回避行動では針路を変えるのが一般的だが、対抗電波の発信やアルミ片の散布で防御措置をとった可能性もある。

 同じ威嚇が繰り返されても自衛隊の対処はこの範囲にとどめる見通しだ。対応を先鋭化させている中国とは対照的に抑制的な対処を続けることが、沖縄県・尖閣諸島をめぐる対立で国際世論を味方につけることにつながるためだ。

 ただ、「不法」な行為には対抗措置を強めることも排除しない。首相は領空侵犯機が無線での警告に従わない場合、曳(えい)光(こう)弾を使った警告射撃を行うことも検討するよう指示しており、日本の領土・領海を守り抜くために必要不可欠な措置は講じていく構えだ。

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