REPORT 現場リポート

ラジオ日本の箱根駅伝

2016.01.22
放送技術

アール・エフ・ラジオ日本では、1995年から箱根駅伝の実況生中継を行ってきました。完全中継になってから概ね20年という歴史が有ります。東京・麻布台のラジオ日本・東京支社内の大会議室に放送センターを作り、スタート・ゴール・各中継所からの(独自)レポートを交えて放送しています。

今年も"その時"がやってきました。NiTRoスタッフ10名は総出でこの大会に臨み、センターや中継所に散りました。今回は、テレビ局とはひと味違った各所の仕事を紹介します。

【ラジオ日本社内・放送センター】

 

普段は会議に使っている部屋が、放送センターに早替わりします。放送センターには、実況アナ・解説・ゲスト・情報アナ・プロデューサー・ディレクター・AD・技術者etcが同じ部屋にいて、コミュニケーションを取りながら長丁場の放送をしています。もっとも、あまり大きな声で指示をしたりすると、実況のマイクが拾ってしまいますから、ほどほどの声とジェスチャーを交えながらコミュニケーションを取ります。
長年やっていますから"あ・うんの呼吸"が身についています。

 

センターでは2名のミキサーが、それぞれ"各中継所を上げ下げする音声卓"と"最終MIXを行なう音声卓"を担当しています。

【マスター】
マスターでは、各中継所をCODECで結び、中継所からの信号を放送センターに送り、センターから戻ってきた完成音声を送出する2つの役割を同時に行います。
もちろん、本来の業務であるCM出しやニュース・交通情報の挿入、ネット送りも行なっています。  

【大手町・スタート/ゴール】
大手町では、スタートとゴールで中継する場所が違います。

 

スタートでは、"モバイルスタジオ"という車を2台使いました。スタート地点の真正面に陣取り、アナウンサーは車の上に立って実況します。(寒っ)
また、朝の監督インタビュー録音や直前の選手のレポートも適宜挿入して、車内でMIXして放送センターに伝送します。

 

ゴールの時は、読売新聞社の向いにあるビルの2階の会議室をお借りして、臨時放送席と機材を設置しました。

 

ゴール地点を俯瞰できる好立地。目の前を選手が通過してゴールする姿を余すところなく伝えます。ゴール後の監督や選手のインタビューは録音して放送席から再生しました。
・臨時回線2回線使用。本線:ステレオ、予備:モノラル
     

   

【鶴見中継所】
機材は車内に設置し、実況は、国道1号と側道の間にある分離帯の中から"立ちレポ"です。

 

・臨時回線1回線使用。モノラル。

【戸塚中継所】
マンション前の空き地を拝借し、イントレを設置。イントレ上から実況し、その下でMIXと伝送を行いました。

・臨時回線1回線使用。モノラル。   

【平塚中継所】
吹きさらしの空き地にイントレを設置しましたが、視界があまりよくありませんでした。しかも海風が強いと人も機材も砂まみれになるという、悪条件のなかでの作業となりました。

 

さらにAC電源が取れないため、機材をバッテリー(カーバッテリーや電池など)で駆動させたのですが、こういうときに怖いのが本番中の"電源落ち"。ホッカイロで温める、直射日光のあたる場所に機材を置く、などの原始的方法でなんとか乗り切りました。

 

・臨時回線1回線使用。モノラル。

【小田原中継所】
中継所付近の車の上から実況し、車内でMIX・伝送を行いました。

  

・臨時回線1回線使用。モノラル。

【小涌園】
本番では技術スタッフは同行せず、アナウンサーとディレクターでレポート音声をセンターに伝送しました。
・臨時回線1回線使用。モノラル。    

【芦ノ湖・ゴール/スタート】
ゴール前の交差点角の管理地をすべてお借りして、イントレと車を設置しました。ゴール時は選手が最後に右折し、スタート時は最初に左折する"一等地"です。

 

アナウンサーはイントレ上から実況し、レポーターは車横のマイクからレポートを入れます。車内にミキサーと伝送システムを設置しました。

 

あの最後の短い直線にノイズマイクを3本設置し、ゴール/スタートの迫力を出しました。放送終了後は、取材してきた各大学の監督のインタビュー素材をセンターに伝送しました。芦ノ湖は毎年寒さと霜との闘いです。いくら平地が温かくても油断はできません。マイナス気温のなか、機材トラブルが起きないよう、細心の注意を払いながらの作業となりました。
・臨時回線1回線使用。ステレオ。

【あとがき】
いかがでしたか。TVの中継とはまた違ったラジオの"手作り感"を味わっていただけましたでしょうか。

 

お正月の風物詩となっている箱根駅伝。沿道でラジオを片手に応援している人、運転中の人など、映像を見られない所で聞いている人に向け、細かな情報や臨場感を感じてもらえるよう、また選手たちの頑張りを音だけを通じて伝えられるよう、各スタッフは努力しています。2016年の箱根駅伝は無事終了しました。でも、ラジオ日本のあちこちから、技術スタッフも制作スタッフもアナウンサーも「もう少しああすれば良かった」「次はこうしよう、そしたらもっと良くなる!」という声が聞こえてきます。選手たちと同じく、もう2017年の箱根駅伝はスタートしているのかもしれません。


 筆者(芦ノ湖担当)
 

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