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食肉バリューチェーン変えるか 代替肉技術の現在地

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CBINSIGHTS
世界的な環境意識・健康志向の高まりを受けて、肉を代替する技術の開発が新興企業を中心に相次いでいる。本物の肉と比べて生産時の二酸化炭素や水の消費を削減できるほか、食肉が抱える倫理的な問題、感染症による供給網の寸断リスク回避、世界的な人口爆発への対応が背景にある。飲食業界でも採用の動きが広がっている。世界的な変革の動きをまとめた。

今のところ、食肉はまだ王座にとどまっている。世界規模では人間は消費カロリーの30%を牛肉や鶏肉、豚肉などの肉製品からとっているとされる。CBインサイツの業界アナリスト予想によると、世界の食肉市場は2040年に2兆7000億ドル規模(約300兆円規模)に達する。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米農務省によると、20年の米国の人口1人当たりの赤身肉と家禽(かきん)類の肉の消費量は過去最高の約102キログラムだった。一方、1960年は約76キログラムだった。

この需要の伸びを満たすため、食肉産業は農場や飼育場に加え、加工・貯蔵センター、輸送・物流、食肉処理場などの仲介業者が関与した複雑なグローバル事業に進化している。 

米国では、米食肉大手タイソン・フーズ、食肉世界大手JBS(ブラジル)、米穀物メジャーのカーギル、米食肉大手ナショナル・ビーフ・パッキングの4社が牛肉加工の3分の2以上を握っている。

だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う消費者の行動の変化や食肉加工工場での集団感染により、食肉サプライチェーン(供給網)は大きな打撃を受けている。損失額は牛肉業界だけで推定136億ドルに上る。

一方、米プランティブル・フーズ(Plantible Foods)、米レベリアス・フーズ(Rebellyous Foods)、米リブカインドリー(Livekindly)、イスラエルのイノボプロ(InnovoPro)など植物由来のたんぱく質に特化したスタートアップは、コロナ禍でも引き続き数百万ドルの資金を調達している。「ビーガン(完全菜食主義者)ミート」の需要は急増しており、あるリポートによると、植物性たんぱく質を由来とする「植物肉」の20年の小売売上高は前年比27%増の70億ドルに達した。

食肉バリューチェーン(価値連鎖)はいずれ劇的に簡素化するかもしれない。動物の細胞を培養して作る「クリーンミート(培養肉)」を手掛ける研究所が、農場や飼育場、食肉処理場に取って代わる可能性があるからだ。

CBインサイツのデータを活用し、成長しつつあるミートレス業界の主なトレンドを取り上げる。

食肉産業と植物肉産業の現状

食肉産業ではこの10年で大規模な再編が進んだ。米食肉加工大手ホーメル・フーズやJBSなどが新たな食肉ブランドや製品を買収し、ますます大きくなっている。

この分野の最大の案件の一つは、中国の豚肉加工大手、双匯国際(現在は万洲国際=WHグループ)による13年の米豚肉生産大手スミスフィールド・フーズの47億ドルでの買収だ。スミスフィールドは「アーマー」「ファームランド」などのブランドを抱える。

ホーメルは14年以降、65億ドルを投じて米アップルゲート・ファームズ、米フォンタニニ・イタリアンミート・アンド・ソーセージズ、ブラジルのセラッティ、米サドラーズ・スモークハウスなどを買収した。21年2月には米食品大手クラフトハインツからナッツブランド「プランターズ」を33億5000万ドルで取得し、消費者向けスナック食品事業をさらに拡大した。

食肉産業はこうした派手な買収に乗り出す一方、事業や倫理、環境面では課題が山積している。

各社はスタートアップからの攻勢や消費者の行動の変化を受け、植物性たんぱく質にも軸足を置き始めている。JBSは20年6月に肉なしたんぱく質を発売したほか、21年4月には欧州3位の植物肉メーカー、オランダのビベラ(Vivera)を4億800万ドルで買収した。タイソンやスミスフィールド、ホーメル、カーギルなども独自の植物肉を提供している。

一方、培養肉や植物肉を手掛けるスタートアップの人気は高まっている。代替肉の世界大手、米ビヨンド・ミート(Beyond Meat)は19年、評価額15億ドル近くで上場した。20年の同社の売上高は前年比約37%増の4億700万ドルだったが、新型コロナの感染拡大が響き、純損益は5300万ドルの赤字にとどまった。

ビヨンドは20年8月に消費者に直接販売するD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)に参入し、21年には米ファストフード大手のヤム・ブランズ、そしてマクドナルドとの提携を発表した。さらに、年内に中国と欧州の生産能力を拡大する。

ビヨンドは特にアジア市場への進出に力を入れており、中国のスターバックスやピザハット、タコベル、一部のケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の店舗で製品を提供する契約を結んでいる。「ビヨンド・ポーク」は同社初の中国市場向け製品だ。

ビヨンドの製品は消費者から支持を得ているが、大きな失敗も経験している。米国では、ダンキン・ドーナツが21年6月、販売不振により「ビヨンド・ソーセージ」の取り扱いを中止した。もっとも、一部店舗ではなお販売している。

ビヨンドの主なライバル、米インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)も急成長している。米カリフォルニア州レッドウッドシティーに拠点を置く同社の調達総額は公表ベースで15億ドルを超える。同社の製品はメキシカンチェーン「クドバ」、ハンバーガーチェーンの「バーガーキング」「ホワイトキャッスル」「レッドロビン」などでお目にかかれる。20年3月時点の企業価値は40億ドルで、米スーパーマーケット大手のクローガーやトレーダー・ジョーズに加え、スターバックスと提携するなど事業を急拡大している。

インポッシブルのデニス・ウッドサイド社長は、同社の製品を扱う店舗は20年だけで50倍以上に増えたとの観測を示している。

同社のパット・ブラウン創業者兼最高経営責任者(CEO)は6月のインタビューで「植物由来の製品は認知度が高まっており、食品業界では今後15年以内に動物由来の製品に完全に置き換わるだろう」との見方を示した。「植物由来の製品の提供は当社の使命であり、この変化は必然だ」と強調した。

ビヨンドは主にスーパーなどの小売店や小規模なレストランに製品を卸しているが、インポッシブルは大手外食チェーンと戦略的提携を結び、コロナ禍でも着実に成長している。インポッシブルと提携している外食大手の多くは、コロナ禍で利用が増えているドライブスルーや配達オプションを持つ全米チェーンだ。ビヨンドはかねてこの分野には相対的に弱い。

インポッシブルは競争が激しくなりつつある市場で差別化を図るため、消費者が同社に抱くイメージを変える取り組みにも資金を投じている。21年4月には自社製品の味や食感を強調するため、全米での広告キャンペーンに乗り出した。植物肉に二の足を踏んでいる肉の消費者に訴えるため、「植物由来」というこの製品の典型的なメッセージから距離を置こうとしているようだ。

インポッシブルのマーケティング担当上級バイスプレジデント、ジェシー・ベッカー氏は「当社の広告ではチーズがしたたるデフォルメされたハンバーガーという、ハンバーガー広告に期待する内容を逆手に取っている。見た目は従来の肉と変わらない新しい肉という位置づけだ」と語った。

ビヨンドの現時点でのシェアはインポッシブルを大きく上回っているが、決して安泰ではない。

なぜミートレスへのシフトが起きているのか

新型コロナで代替肉へのシフトが加速か

食肉産業はパンデミックでの工場の稼働停止、それに伴う価格上昇、新型コロナに感染した作業員の増加により、食肉の供給が不足する見通しを明らかにして批判を浴びた。こうした状況は植物肉各社に新たな商機をもたらす可能性がある。

レストランの休業や学校の閉校などで従来の食肉販売ルートは一変しており、この状態はなお続いている。生産減少と価格上昇で消費者の選択肢は減り、代替品となる植物肉の消費が増えるだろう。

20年3月1日~5月2日の9週間の植物肉業界の小売売上高は264%増えた。食肉全体に占める植物肉の売り上げはなお小さいが、こうした伸びはコロナ禍で代替肉のチャンスが高まっていることを示している。

乳製品の代替品の消費も急増している。20年3月第1週の乳製品の需要は減ったのに対し、オーツミルクの売り上げは前年同期比347%増えた。オーツミルクの売り上げは過去2年で1200%増えたとの推計もある。これは消費者の好みが大きく変わったことを示している。

コロナ禍により、消費者は製品の不足だけでなく、作業員の健康や動物の倫理的な扱いなど食肉サプライチェーンの問題にも初めて直面している。

食肉工場の稼働停止で数百万頭の動物が安楽死させられているとの報道により、消費者の嫌悪感は高まった。コロナの影響で米国ではこれまでにないほど多くの豚が殺処分され、20年7~12月期だけで約4億5000万キログラムの食肉が廃棄された。

米食肉加工大手が操業を再開すると、ソーシャルディスタンスがきちんと確保されていないなど作業員の危険な労働環境が報じられた。食肉加工工場では集団感染が相次いだ。米NPO「食品・環境報道ネットワーク(FERN)」によると、食品加工工場での新型コロナ検査の陽性者は5万4000人近く、死者は少なくとも270人に上っている。

スミスフィールド・フーズが所有・運営する米ロサンゼルスの豚肉加工施設など、集団感染が1年以上にわたって続いている施設もある。公衆衛生や安全性の基準を繰り返し違反していることが感染と混乱の悪循環が続いている原因とされる。

食肉工場での集団感染のニュースにより従来の食肉製品は悪い意味で注目され、消費者は植物肉を選ぶようになるかもしれない。

米動物愛護協会の家畜保護部門バイスプレジデント、ジョッシュ・ボーク氏は米ブルームバーグ通信とのインタビューで「新型コロナをきっかけに、消費者は自分の選択や、肉を購入し続けたいかどうかを評価し始めている」と語った。

だが、米国の農業関連産業で最も産業化が進んだ食肉産業が直面している運営面の課題はパンデミックだけではない。こうした企業はサイバー攻撃を受けて生産が停止し、広範な製品供給の遅れや不足を招いている。JBSは21年5月、ランサムウエア攻撃を受け、米国の全ての生産施設の操業を一時停止した。オーストラリアの施設も操業を停止した。

ミートレスを推進するマクロ要因

ミートレスな未来への移行を推進するマクロレベルの理由は新型コロナ以外にもいくつかある。

都市化や人口増加、世界的な中間層の増加などにより、肉の消費量は増えている。国連によると世界の人口の約56%は都市部に住んでおり、50年には68%に増えるとみられている。

一方、世界の人口は50年には97億人に増え、食料生産量も大幅に増える。伸びをけん引しているのは新興国で、特に中国は世界最大の肉消費国であり、中間層の増加によってたんぱく質の消費量は年約4%のペースで増えると見込まれている。

米農務省のデータでは、20年の中国の豚肉消費量は4000万トンに達し、欧州連合(EU)の2倍以上に上ったようだ。パンデミックは中国の食肉消費量に破壊的なインパクトを及ぼしたが、食肉全体の需要は増え続け、植物肉も支持を得つつある。

こうした需要増加は将来世代の食料供給に問題を及ぼす恐れがある。代替肉企業はその差を埋めようとしている。

代替たんぱく源への移行は食肉生産が環境に及ぼす悪影響を軽減する可能性がある。家畜は温暖化ガス排出の主な要因だからだ。しかも、家畜が減れば世界の耕作地を減らし、土壌侵食を食い止め、水供給の逼迫も緩和できる。

さらに、消費者は体にいい代替食品を求めている。世界で肥満率が上昇し、消費者がより健康な代替食品に関心を示していることも、肉なしたんぱく質の需要を押し上げている。

米国の業界団体、植物由来食品協会(PBFA)によると、19年の食品の小売売上高は前年比2.2%増だったのに対し、植物性食品は11.4%増えた。20年の食品の小売売上高は15%増、植物性食品は27%増で70億ドルに達した。

さらに、農業とIT(情報技術)を融合した「アグテック」と合成生物学の進化により、ハイテクな代替肉製品が誕生している。動物などの細胞から食材を作る「細胞農業」と分子工学を駆使することで、味も食感も従来の肉にさらに近い代替肉が増えている。

代替肉の消費は、肉の消費にまつわる倫理的問題も軽減する。食肉産業はかねて生産慣習の背後にある倫理的な問題が懸念されてきた。

消費者が食品サプライチェーンに透明性を求めるようになっていることで、肉や食品の生産履歴を追跡するブロックチェーン(分散型台帳)プロジェクトも増えている。例えば、カーギルは17年、ターキーの購入者に七面鳥の産地を示すため、ブロックチェーン技術を試験導入すると発表した。

カーギルのジャスティン・カーショー最高情報責任者(CIO)は「分散型台帳技術を使えば、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティー(生産履歴の追跡)を確保できる。現在の対象の一つは『ハニーサックル・ホワイト・ターキー』であり、非常に単純なブロックチェーンで七面鳥の産地や飼育場、その所有者や位置についてのデータを収集し、その情報を店舗まで運び、消費者に提供できる」と説明した。

一方、ノルウェー水産物協会は20年6月、米IBMと提携し、IBMのブロックチェーンを使ったネットワーク「ノルウェー・シーフード・トラスト」でサプライチェーンのトレーサビリティーを確保した。

このネットワークのパートナーであるノルウェーのIT企業アテアのマイケル・ジェイコブスCEOは、ノルウェーの主要産業であるサーモン産業でこの技術が標準になることを望んでいる。中欧各国の消費者は既にサーモンのパッケージのQRコードをスキャンし、持続可能な漁業の取り組みや、その魚がスーパーの棚に陳列されるまでの行程について学ぶことができる。

代替肉は汚染も軽減する。無菌環境の研究所で肉を培養すれば汚染が減り、肉の生産に抗生物質を使わずに済むようになる。そうすれば現行の食料生産バリューチェーンの世界的な健康問題を軽減する役割を果たせる。

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