損保の価格調整問題、4社に業務改善命令 金融庁
損害保険大手による企業向け保険の価格調整問題をめぐり、金融庁は26日、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社に対して保険業法に基づく業務改善命令を出した。独占禁止法が禁じるカルテルに触れる恐れのある不適切な取引が横行していたとして、内部管理体制の強化や再発防止を求めた。
鈴木俊一金融相は26日の閣議後会見で「経営責任の所在の明確化や経営管理体制の抜本的な強化、業務改善計画とその後の進捗報告を求める。大手4社が独禁法の趣旨に照らして不適切な行為をしていたのは遺憾だ。本件を重く受け止め、こうした事態を二度と起こさないように抜本的な改善を求めたい」と述べた。
複数の損保会社がリスクを分散して引き受ける「共同保険」をめぐる取引で、保険料の水準を各社の担当者が事前に調整していた。6月に私鉄グループの東急向けで調整行為が発覚し、ENEOSなど100を超える取引先との保険契約で同様の行為が判明した。企業との契約にとどまらず、東京都が実施した公用車の自動車保険の入札などでも見つかった。
金融庁は損保大手4社に対して内部管理体制の不備の是正を求める。営業部門の担当者や経営陣の独禁法に対する理解が不十分だったケースがあった。法令順守のための管理体制の構築や役職員への教育体制の見直しを促す。
金融庁は損保会社の営業面での貢献度合いに応じて、企業が契約シェアを調整するような不適切な取引実態があったことを問題視している。政策保有目的で顧客企業の株を持っているかどうかなど契約内容と直接関係のないことも取引に影響していた。不透明な慣行が価格調整の下地になったとみている。
日本損害保険協会の新納啓介会長は12月の会見で「保険契約の引き受けに影響するような過度な支援は見直しをする必要がある」と述べた。損保協は独禁法を順守するための指針を改定し、損保会社の担当者同士の情報交換を厳しく制限した。
今後の焦点は、独禁法を所管する公正取引委員会の対応に移る。公取委は19日、大手4社がカルテルを結んだ疑いが強まったとして立ち入り検査に踏み切った。企業向け保険のシェアは4社で9割を超える。各社が事前調整によって安定的に利益を確保する狙いがあったとみて実態解明を進める。
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企業向け損害保険の見積もりなどでカルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会は2023年12月19日、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損害保険の損害保険大手4社などに独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査しました。金融庁も同月26日、4社に業務改善命令を発出。今後は公取委による問題の実態解明や、業界慣行の是正に向けた金融庁の対応などが焦点となります。
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