モスクワに無人機攻撃 ゼレンスキー氏「反攻時期決定」
【イスタンブール=久門武史】ロシア国防省は30日、モスクワにウクライナのドローン(無人機)による攻撃があったと発表した。ロシア軍は断続的にウクライナのキーウ(キエフ)にドローン攻撃を加え、同日も攻撃を行った。ウクライナのゼレンスキー大統領は29日に反転攻勢の時期について「決定が下された」と述べており、両国の応酬が本格化しそうだ。
ロシア国防省によると、モスクワに飛来した8機のうち3機を電子戦システムで制御不能とし、5機を地対空ミサイルで撃ち落とした。モスクワのソビャニン市長は複数の建物が軽微な損傷を受けたほか、市民2人が軽傷を負ったと明らかにした。
大規模なドローン攻撃によりモスクワの民間住宅が被害を受けたのは、ウクライナ軍事侵攻の開始以来初めてとみられる。ロシアメディアによると、複数のドローンがプーチン大統領ら政府高官の邸宅が集まるモスクワ郊外の高級住宅地近くに墜落したという。
ロシアのペスコフ大統領報道官は30日、ドローンによるモスクワ攻撃について「特別軍事作戦を継続し、設定された目標の達成が必要だということをまたも立証した」と記者団に説明した。プーチン政権は市民に不安が広がらないよう腐心している。
一方、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は同日に「攻撃は増えていくと予測するが、我々は直接関係ない」と述べた。ロイター通信が報じた。
ロシアは5月に入り、キーウに断続的な攻撃を仕掛けている。30日未明にもロシア軍のイラン製ドローンによる攻撃があり1人が死亡した。ロイター通信によると、5月に入り17回目の攻撃となる。
ウクライナ軍によると29日未明にはキーウに巡航ミサイル最大40発、イラン製ドローン約30機の攻撃があった。軍はミサイルやドローン、無人偵察機を撃墜した。日中にも巡航ミサイルと弾道ミサイル計11発の攻撃があり、すべて撃ち落としたとしている。
ロシア軍によるキーウへの相次ぐ攻撃について、防衛省防衛研究所の兵頭慎治・研究幹事は「ウクライナ側の防空体制を弱体化させる狙いがある」と指摘。首都への攻撃頻度が増すと「前線に配備している防空ミサイルを首都防衛のために後退させるといった判断が必要になるかもしれない」とし、ウクライナ軍の防空ミサイルを枯渇させるのが目的だとの見方を示した。
こうしたロシアの攻撃に対し、ウクライナ国防省のブダノフ情報局長は29日に「我々を脅そうとする者はすぐに後悔する」とし、報復を示唆していた。
ゼレンスキー氏は同日のビデオ声明で具体的な時期には言及しなかったものの、反転攻勢の時期について「決定が下された」と表明。軍から弾薬供給や新規部隊の訓練、戦術について報告を受け「我々はやる」と断言した。
兵頭氏はウクライナによる反転攻勢が始まるタイミングに関しては「情報戦の側面がある」とみる。ウクライナ軍はロシアを軍事的にかく乱させたいと考えており「実際に大規模な地上部隊が南部などですぐに進軍するかどうかは見極めが必要だ」と話した。
ウクライナ議会は29日、ロシアにドローンを提供するイランに50年間にわたる新たな制裁を科すことを承認した。輸出禁止などが含まれる。
ロシア通信によると、ロシアのショイグ国防相は30日、国防省の会議で、5月にウクライナ軍の戦車400両以上と460機以上のドローンを破壊し、1万6千人以上の兵員を殺害したと述べた。英国が供与した空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」も29発迎撃したとした。
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