米国、中絶薬が薬局で入手可能に FDAが規制緩和
【ニューヨーク=山内菜穂子】米食品医薬品局(FDA)は経口妊娠中絶薬をめぐる規制を緩和した。処方箋などがあれば認定された薬局で中絶薬を受け取れるようになる。ただ中絶を禁止する保守的な州の薬局での販売は困難とみられ、中絶措置が必要な女性への支援は引き続き課題になる。
FDAは3日、中絶薬の「ミフェプリストン」について、処方箋と本人の同意書があれば認定された薬局が販売できるとした。薬局は中絶薬を郵送することもできる。これまでは医師や医療機関から直接または郵送で中絶薬を受け取る必要があった。
米産科婦人科学会は4日、「中絶へのアクセスを確保するための重要な一歩だ」と歓迎する声明を発表した。一方で「すべての人にとってアクセスの問題が解決されたわけではない」とも指摘した。中絶を禁止する州にある薬局での販売は困難とみられるためだ。
中絶の権利の是非は米世論を二分するテーマになっている。保守派判事が多数を占める連邦最高裁判所は2022年6月、中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆し、各州に判断を委ねた。米メディアによると現在、南部テキサス州など少なくとも13州が中絶を原則として禁じている。
中絶を禁じる州に住む女性は他州に行き、中絶措置を受けるケースが多い。中絶の権利を擁護するリベラルな州では、女性や医療機関を支援したり、州憲法に中絶の権利を明記したりする動きが出ている。バイデン政権にとっても安全な中絶措置へのアクセスの確保は重要課題になっている。
米ガットマッハー研究所によると、22年2月現在、米国で実施される中絶のうち54%が中絶薬によるものという。薬による中絶の割合は新型コロナウイルスが流行した20年に50%を超えたことが分かった。中絶薬の需要は今後も増加するとみられている。
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