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[FT]ウクライナ「鉄の将軍」、ザルジニー総司令官の気骨

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Financial Times

ウクライナ軍は晩夏からの数カ月間、ロシア軍との市街戦に持ち込まずに南部の要衝へルソンを奪還するため、用意周到な反撃を進めた。

ザルジニー総司令官率いるウクライナ軍の狙いは、精度の高い西側の迫撃砲を駆使してドニエプル川をまたぐロシアの補給路を断つ一方、規模で勝るロシア軍を相手にウクライナ側の損失を最小限にとどめることだった。2万人を超えるロシア軍の部隊を徐々に孤立させるため、武器庫や指揮所、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミアにつながる2本の橋を高い精度で攻撃した。

この戦略によって、ロシア軍は州都へルソンとヘルソン州の他地域からの撤退に追い込まれ、ロシアのプーチン大統領に挫折をもたらした。

東部ハリコフ、南部ヘルソンを奪還

ロシアが2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ウクライナが善戦している背景には国民から「鉄の将軍」とたたえられる人物の指揮がある。

ロシアから奪還した東部ハリコフ地域の反転攻勢に参加したウクライナ国家親衛隊のビタリー・マルキフ氏は「敵とその行動を知り、海外パートナーの支援を得て弱みを突くことができれば見事なことだ。これをやってのけているのがザルジニー総司令官だ」とたたえた。

目まぐるしく変化する戦場へのザルジニー氏の対応力は、現地の部隊からロシア軍による前線での防御が手薄になっているとの報告を受けたハリコフで実証された。へルソンで成功した持久戦とは対照的に、ザルジニー氏と彼の将校らは一瞬の隙を突いた。9月、電光石火の反転攻勢をかけると、ロシア兵は戦車からブーツまでありとあらゆるものを残したまま慌てて逃走した。

ウクライナの元国防相で、現在は政府の安全保障担当顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュク氏は「ハリコフとへルソンにおいて、まさに臨機応変な戦闘だった」と強調した。

さらにザルジニー氏の成功の背景には、下位の指揮官に権限を与え、自主性を促し、必要な機会を得るために必要なフィードバックを得ていることがあると語った。「前線の兵士は首都キーウ(に陣取る総司令部)よりも状況を熟知している。彼らは現場にいるからだ。敵の弱点を見つけ出し、臨機応変な攻撃の立案を支えている」とも説明した。

部下の能力や才能を引き出す

ザゴロドニュク氏によると、ザルジニー氏の指揮は「部下に自らの能力や才能に気付かせる」というスタイルだ。これに対し、ロシア軍は「1人か2人が判断を下し、残りは黙っていろと言われる」。西側の支援国から供与された最新鋭の兵器も加えた「この強みが、ロシアが持つ大量の迫撃砲や戦車など全てのものに勝っている」という。

ロシア軍の指揮系統はトップダウン型で、現場の指揮官が主導権を握るのをためらっており、守勢に回っていると軍事専門家は指摘する。一方、ウクライナは手を緩める兆しはみられない。

米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はヘルソン解放を受け、ツイッターに「ウクライナ軍は冬も歩みを止めるわけがない。ロシア軍に圧力をかけ続け、問題を修正したり、防御力を強めたりする暇を与えないだろう」と指摘した。

米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、ウクライナ政府は今冬の期間をロシアと停戦の交渉に使うことができるとの見方を示すと、自分の意見をめったに公にしないザルジニー氏は異議を唱えた。ザルジニー氏はフェイスブックの投稿で、米国側に「我々の目的はウクライナ全土をロシアの占領から解放することだ。どんな状況でもこれを続ける。交渉の唯一の条件は、ロシアが全ての占領地域から去ることだ」と電話で伝えたことを明らかにした。

首都防衛でも重要な役割

ある米軍関係者はザルジニー氏がロシア軍の動きや失敗に機敏に対応する能力を高く評価した。一例として、戦争初期のキーウの防衛を挙げた。ロシア軍は補給路を広げすぎて行き詰まり、側面にいたウクライナ部隊に打ちのめされた。

この関係者は「ザルジニー氏は部隊の機動力を維持し、1カ所にとどめなかった。動き続けることは難しく、規律を必要とする」と語った。

キーウの戦闘では、ウクライナの防空態勢を分散させたザルジニー氏の判断がロシアの制空権掌握を阻止する重要な役割を果たしたとも指摘した。

49歳のザルジニー氏はウクライナ西部の都市ノボグラード・ボリンスキーで生まれた。ウクライナが旧ソ連からの独立を宣言した2年後の1993年、地元の機械製造学校を卒業した。その後、黒海に面した南部オデッサの陸軍大学校に進み、97年に卒業した。

ロシア政府が東部ドンバス地方で親ロシア派武装勢力をあおり、ウクライナ軍と代理戦争をさせると、ザルジニー氏は2014年からこの地域に派遣された。資金不足のウクライナ軍は当初、不意を突かれ、ウクライナからの分離を目指す親ロ派勢力に広範囲の領土を奪われた。だが、組織を立て直して実戦経験を積み、この地でザルジニー氏は型破りな取り組みで評価を築いた。

ドンバスでザルジニー氏に指揮官として仕えたミハイロ・ザブロドスキー中将は、ザルジニー氏は武器庫を爆破するために砲兵隊に「通り抜けられるとは到底思えない地帯」を通らせたと振り返った。「この作戦は見事に成功した。あまりに素早い攻撃で、敵は何も反応しなかった」

ザルジニー氏は21年7月に総司令官に任命され、この4つ星階級の将軍は英雄とたたえられてきたが、軍事関係者以外で肉声を聞いたことがある者はほとんどいない。インタビューの依頼にはめったに応じず、近い人物によると大抵は作戦指令室で職務に励んでいる。

ザゴロドニュク氏はザルジニー氏について「ウクライナの新たな世代の将校の産物だ」と評する。「話してみると分かる。気さくで自然体で、飾り気がなく率直だ。近寄りがたいオーラはない」

インターネット上でも存在感

妻と2人の娘がおり、ウクライナのソーシャルメディアでは熊のような風貌に愛情を込めて言及される欠かせない存在になっている。

今秋のプーチン氏の70歳の誕生日には、SNS(交流サイト)の「テレグラム」にウクライナ軍が持つチャンネルに、巨大なザルジニー氏がケーキを持った小さなプーチン氏の後ろに立ってろうそくを吹こうとするプーチン氏を目隠しする風刺画が投稿された。その数時間後、プーチン氏の肝いりで建設されたクリミアとロシアを結ぶクリミア大橋で巨大な爆発が起きた。

世論調査でザルジニー氏はゼレンスキー大統領と並んでウクライナで最も信頼されている人物の一人であることが示され、ここ数カ月はゼレンスキー氏との緊張関係のうわさが渦巻いている。両者はウクライナ指導部内での対立をあおろうとするロシアの偽情報だと主張している。しかし、複数の関係者によると、ザルジニー氏は世間に注目される行動を控えるように求められている。

ザルジニー氏自身はウクライナの戦果の手柄を独り占めしておらず、ソーシャルメディアで軍幹部や一般兵士、市民をたたえている。

例えば、キーウ防衛と東部の反転攻勢の責任を持つ陸軍トップのオレクサンドル・シルスキー上級大将や、ドンバスで部隊を指揮するセルヒイ・シャプタラ中将とセルヒイ・ナエフ中将を挙げている。

ザルジニー氏は最近「真のリーダーシップと勇気は決定的な状況であらわになる」と書き込んだ。「我が軍の指揮官は部隊に対して単に『前進せよ』とは言わない。『私の後に続け』と導く」

ウクライナのレズニコフ国防相は、ザルジニー氏にはウクライナ軍の規模の小ささを優位に生かす才能があると指摘する。「(旧約聖書で)巨人ゴリアテに立ち向かった少年ダビデのように、ロシアに石を投げつけて倒している」

By Roman Olearchyk

(2022年11月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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