憲法解釈変更を閣議決定 集団的自衛権の行使容認
政府は1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるようにするため、憲法解釈の変更を決定した。行使を禁じてきた立場を転換し、関連法案成立後は日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようになる。「専守防衛」の基本理念のもとで自衛隊の海外活動を制限してきた戦後の安全保障政策は転換点を迎えた。
安倍晋三首相は同日夜に記者会見し、今回の決定の理由を「あらゆる事態を想定して国民の命と平和な暮らしを守るために切れ目のない安全保障法制を整備する必要がある」と強調。万全の備えが戦争の抑止力につながるとした。集団的自衛権を行使する場合は「必要最小限度でなければならない」と述べ、限定容認の立場を主張した。
解釈変更の閣議決定にあたり、政府は集団的自衛権の行使を禁じた1972年の政府見解を引用した。当時は憲法が武力行使を認める必要最小限度の範囲を超えるとした。今回は安全保障環境の変化などによって「他国への武力攻撃でも、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」と指摘。必要最小限度に含まれると結論づけた。
政府は行使を抑制する歯止めとして、武力行使を認める新たな3要件を規定。(1)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命・自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(2)国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使――を挙げた。3要件を満たした場合の武力行使は「憲法上はわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」とし、国際法上は集団的自衛権が根拠と明記した。
集団的自衛権を使う必要がある事態について、政府はこれまでの自民、公明両党の協議で、邦人輸送中に武力攻撃を受けた米艦の防護や、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃など8つの事例を示してきた。いずれのケースも3要件を満たせば可能になると説明している。
集団的自衛権以外で、政府は戦闘下のシーレーン(海上交通路)での機雷除去を想定し、国連決議に基づき多国籍軍などが侵略国を制裁する集団安全保障での武力行使も与党に提案したが、公明党が反対したため規定しなかった。政府は集団的自衛権同様、必要最小限度の武力行使などの要件を満たせば、認められるとの立場だ。国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が離れた場所にいる他国部隊や国連職員を助ける「駆けつけ警護」での武器使用を可能にする方針も示した。
沖縄県・尖閣諸島沖で繰り返される中国の挑発行為などを念頭に、他国からの武力攻撃に至る前の侵害など「グレーゾーン」事態に迅速に対応するため、自衛隊の出動手続きの見直しも盛った。