香港活動家・周庭氏に禁錮10月 19年の大規模デモ
【香港=木原雄士】香港の西九龍裁判所は2日、2019年の違法デモを扇動した罪などに問われた民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏に禁錮10月の実刑判決を言い渡した。共に活動していた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は禁錮13月半、林朗彦氏は禁錮7月の判決が下った。
3人は即日収監された。実刑判決を受けたのは「逃亡犯条例」改正案に抗議し、警察本部を包囲するなどした19年6月21日のデモ。黄氏は若者らを扇動して違法な集会を主催した罪、周氏は扇動と違法集会に参加した罪を認定された。
今回の判決は香港国家安全維持法が施行される前の犯罪が対象で、同法が適用されたわけではない。ただ、著名な活動家への厳罰によって社会の萎縮ムードがいっそう強まるのは必至だ。
黄氏と周氏は行政長官選挙の民主化を求めた14年の大規模デモ「雨傘運動」に参画し、国際的に知られるようになった。19年の大規模デモはリーダーがいない抗議活動で、周氏らは主に海外向けに香港の民主化を訴える役割を担っていた。
周氏は犯罪歴がなく早い段階で起訴内容を認めたため、社会奉仕など軽微な量刑になるとの見方も出ていた。3人は前回11月の裁判で勾留が決まり、刑事施設に入った。周氏が実刑判決を受けるのは初めて。
周氏は2日の裁判では終始うつむき、判決を聞いて涙を流したという。上訴のための保釈請求は却下された。黄氏は弁護士を通じて「これが終わりではない。香港の民主主義と自由のための戦いは必要だ」とコメントした。
黄氏はデモに絡む複数の罪で起訴され裁判中だ。今後、有罪判決が相次いで投獄が長引く可能性もある。周氏は8月に国家安全法違反の容疑で逮捕され、捜査が続く。
国家安全法の施行後は抗議活動のスローガンを口にするのも違法になった。民主派を取り巻く環境は厳しさを増す。周氏らが所属した民主派団体は活動を続けるのが難しいとして6月に解散し、創設メンバーの活動家、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は英国に逃れた。
香港警察は19年6月に始まった一連の抗議活動で1万人以上を逮捕し、うち2300人超が起訴された。
2日朝には昨年8月の抗議活動に絡み香港バプテスト大学の学生会幹部を逮捕するなど、摘発を続ける方針だ。
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