ニコン、タイにカメラ生産を集約 海外で2000人削減
ニコンは5日、宮城県の拠点でカメラ本体の生産をやめ、タイ工場に集約する方針を明らかにした。海外では生産や販売を中心に2千人超を削減し、一連の構造改革で800億円以上のコストを削減する。すでにカメラ事業の運営費を削減する計画を発表しているが、新型コロナウイルスの影響でもう一段の構造改革を迫られた格好だ。
「来期は全ての事業セグメントで黒字化を確実なものにしたい」。馬立稔和社長はオンライン記者会見で構造改革の狙いを、こう語った。5日に発表した20年4~9月期連結決算は売上高が前年同期比40%減の1756億円、最終損益は315億円の赤字(前年同期は163億円の黒字)。4セグメント全ての営業損益が赤字となった。
21年3月期で黒字化するのは半導体や液晶パネルの製造装置を手掛ける精機事業だけで、その他の3セグメントは赤字の見通し。最終損益は500億円の赤字を見込む。22年3月期も「回復のペースは緩やか」(馬立社長)とみられる。
黒字化に向け、20年3月末に1万1408人だった海外従業員のうち2千人強を減らす。国内従業員は約9千人の現状の規模を維持しながら、成長領域にシフトする。
事業別で焦点となるのがカメラだ。現在はタイと宮城県の2拠点でカメラ本体を生産しているが、タイに集約してコストを抑える。商品企画や開発ではプロや趣味層向けにシフトする。生産設備などで減損損失を計上した効果もあり、事業運営費を22年3月期までに630億円削減する。
今期の同事業の売上高は1400億円の見通し。一連の構造改革で、売上高が1500億円以下でも黒字となる体制を目指す。本社や調達の費用を見直し、180億円のコストを削減する。
カメラ市場は縮小が続いている。スマートフォンの普及や高性能化に伴い、デジカメの出荷額は19年までの5年間で4割減少した。中でも落ち込みが大きいのがコンパクトデジタルカメラや一眼レフで、ミラーレスは比較的堅調だ。
ただしニコンはミラーレス製品の発売が遅れ、調査会社のテクノ・システム・リサーチによれば19年の出荷台数はソニーやキヤノン、富士フイルム、オリンパスに次ぐ5位。他社に比べてカメラ事業が苦戦している。これまでにカメラ事業の運営費を500億円削減する構造改革を発表し、タイやラオスの生産拠点の縮小を進めてきた。
そこに追い打ちをかけたのが新型コロナだ。卒業式などのイベントや旅行が難しくなり、カメラの販売が急減している。20年1~9月の出荷台数は半減し、出荷額は約4割減少した。「市場の縮小ペースが2年ほど繰り上がった」(ニコン幹部)という。8月に事業運営費の削減目標を600億円に増額し、今回さらに30億円追加して630億円に引き上げた。
「カメラはプロや趣味層の需要しか残らない」。新型コロナが収束すれば需要が回復するとの楽観シナリオは後退し、カメラ市場が半減した今年の状況が継続するとの見方が業界関係者の共通認識となっている。構造改革を進めながらプロや趣味層を開拓できることが今後の課題となる。
(花田幸典)
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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