中国カンシノ、コロナワクチン「ヒトへの効果確認」
【大連=渡辺伸】中国の製薬スタートアップ、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)は25日、新型コロナウイルス用に開発中のワクチンで、効果を確認したと発表した。第1臨床試験を完了した段階で、ヒトに対する効果が確認されたのは世界で初めて。ワクチンでは米中が激しい開発競争を展開しており、中国勢は政府の支援でいち早い実用化をめざす。
同社の広報担当者は日本経済新聞の取材に「ヒトを対象とした効果の確認は世界で初めてだ」と説明した。英医学誌ランセットに研究成果をまとめた論文を発表した。
世界保健機関(WHO)によると、新型コロナ向けワクチンは22日時点で世界で10種類が臨床試験(治験)の段階にある。そのうち5種類を中国勢が占め、カンシノはその一社だ。米スタートアップのモデルナは18日、第1臨床試験の中間結果として「前向きな結果が得られた」と発表したが、まだ試験は完了していない。
カンシノが3月16~27日、男女108人にワクチンを接種したところ、接種から14日後にウイルスを中和できる抗体などが体内で増加した。接種から7日後には約5割の参加者で発熱や疲労、頭痛などの副作用が起きたが、接種28日後では重い症状は見られなかった。
同ワクチンは中国人民解放軍の軍事医学研究院と共同研究しており、今は第2臨床試験を進行中だ。第3臨床試験ではカナダ国立研究機構と共同で実施する計画。カナダは新型コロナの感染者が多く、研究地として有効と判断した。実用化の目標時期は示していないが中国メディアの第一財経は「早ければ2020年秋に実用化できる」と報じた。
中国政府は22日、感染症対策として1兆元(約15兆円)の特別国債を発行すると発表。李克強(リー・クォーチャン)首相は「特別国債を活用してワクチンや治療薬の研究開発への(資金)投入を増やす」と述べた。
カンシノは09年設立の民間企業。19年に香港証券取引所に上場したが、製薬事業による売上高はほぼゼロだ。一般的に薬の臨床試験は第1から第3段階まであり、第3臨床試験まで終えると実用化が見えてくる。
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