イラク首相が辞任表明、反政府デモ激化で引責か
【カイロ=飛田雅則】反政府デモが続くイラクのアブドルマハディ首相は29日、声明で国会に辞意を伝えると表明した。ロイター通信などが伝えた。首都バグダッドなど各地で大規模な反政府デモが続き、死傷者が拡大している。アブドルマハディ氏は引責辞任とみられるが、混乱の収束につながるかは不透明だ。
アブドルマハディ氏は声明で「国会に辞表を提出する」と述べた。国会が同氏の辞任を認めるかを判断する。高い失業率や汚職に抗議する反政府デモが発生した10月以降、治安部隊との衝突で400人超が死亡した。政府に影響力を持つ隣国イランに対する反発も高まっている。27日には中部ナジャフでイランの在外公館が放火されるなど事態は悪化している。
国民からは経済問題に対処できないアブドルマハディ氏の辞任を求める声が強まっていた。政治に影響力を持つイラクのイスラム教シーア派最高権威シスタニ師は29日「平和的なデモへの攻撃は禁じられている」と述べ、治安当局によるデモの取り締まり強化をけん制した。
イラクの前回の選挙は2018年5月に行われた。第1勢力となったイスラム教シーア派指導者サドル師の政党連合や、シーア派のイランに近い第2勢力のアミリ元運輸相らの政党連合がアブドルマハディ氏を推し、同氏は同年10月に首相に就任していた。
辞任を表明したアブドルマハディ氏の後任を巡って政党連合の間での争いも激しくなれば、政情の混乱に拍車がかかる恐れもある。