日本製鉄、日新製鋼を合併 将来の設備削減見据える
日本製鉄は3日、完全子会社の日鉄日新製鋼と2020年4月1日をめどに合併すると発表した。1月に完全子会社にしたばかりだが、米中貿易戦争の長期化を背景とした急速な市況の悪化で鉄鋼業を取り巻く収益環境が変化するなか、将来の設備削減も見据えて一体運営に踏み切る。間接部門の統合による経費削減にもつなげる。
3日付で合併契約を結んだ。日鉄を存続会社として日鉄日新製鋼(以下、日新)を吸収する。合併により日新は解散する。合併に伴う事業再編などの計画は今後詰めるが、合併による業績影響は軽微としている。
日鉄は17年3月に日新製鋼(当時)を買収し、19年1月に完全子会社にした。国内需要の縮小を念頭に、両社で経営資源の統合を進めるとともに、特殊鋼やステンレスなど、日新が強い付加価値の高い鋼材製品をグループに取り込み、相乗効果の創出を目指してきた。
完全子会社化から1年を待たずして早期の合併を決めた背景は2つある。1つは日本の鉄鋼業を取り巻く急速な経営環境の悪化だ。米中貿易摩擦の長期化で世界景気が減速するなかで鋼材の価格が世界的に下がっており、逆風が吹いている。日鉄の20年3月期の事業利益(国際会計基準)は19年3月期比で55%減の1500億円と大幅に目減りする見通しだ。
2つ目は日新の経営状況の悪化だ。19年3月期は西日本豪雨で呉製鉄所(広島県呉市)が被災し、損失が拡大している。呉製鉄所は火災も起こり復旧が長期化する。日鉄は「日新で度重なる事故や災害が発生するなかで、安定供給に向けた一体運営が必要になっている」と説明した。
製造業の海外割合が拡大を続ける中、日本の鉄鋼業界はこれまでも過剰設備の削減に取り組んできた。今後も国内需要は大きな拡大が見込めず、日鉄グループも将来はさらなる設備の削減が迫られる可能性が高い。このため、全製鉄所をまとめて運営すべきだと判断した。財務経理や総務などの統合を通じてもコストを削減できる。
今回の合併で国内の高炉大手は日鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社に集約される。日鉄は4月に旧新日鉄住金から社名変更して新体制を始動したばかりだ。国内需要が長期的に縮小するなかで成長市場である海外でのグローバル戦略を早期に進めたい考えで、国内の経営体制の効率化を今後も急ぐ。