東電、新規事業集約し新会社 EVやドローンに3年で100億円
東京電力ホールディングス(HD)は27日、新規事業を集約して独立させる新会社「東京電力ベンチャーズ」を設立したと発表した。電気自動車(EV)への充電やドローンの飛行支援など、成長分野と見込む事業に3年間で100億円規模を投じる。新規事業への投資を積極的に続けていた東電だが、新会社への集約を通じて迅速な意思決定と採算を徹底する狙いがある。
「太陽光発電や蓄電池の導入など、電力事業では創造的破壊が起きている。この変化を成長の機会と捉えていたが、さらに加速させたいと考えた」。同日記者会見した東京電力ベンチャーズの赤塚新司社長は、新会社への思いをこう語った。東電HDは2013年に先進的な事業モデルを発掘する組織「新成長タスクフォース」を設置していた。今回の新会社は、同組織を廃止し、独立させたものだ。
新会社の事業投資は3年間で計100億円規模を想定し「新成長」が担っていた事業を引き継ぐ。今後は立ち上げた新規プロジェクトごとに分社化し、機動的な事業運営をめざす。7月2日に40人の体制で事業を開始する。
東電HDが3月に事業を開始したブロックチェーンなどを活用する電力小売事業を手掛ける「TRENDE」(東京・千代田)を新会社の傘下にする。開発中の案件としては東電が持つ送電線を利用してドローンが安全に飛行できるよう誘導するサービスやEVの充電事業、電柱にセンサーを設置して子供などの位置情報を取得する見守り事業など6事業をあげた。年内に2、3件の事業化をめざしたい考えだ。
東電は人口減少などで既存の電力事業は大きな成長が見込めない中、「新成長」を中心に新事業や投資を積極的に行ってきた。ただでさえ難しい新事業やスタートアップへの投資だが、東電は福島第1原発事故で廃炉や賠償の費用として16兆円を捻出しなければならない。東電内にはこれらの事業の収益性を疑問視する声もあった。
新会社は事業ごとに分社化し、事業採算を判断しやすくする狙いもある。今後も東電として難しい投資判断を迫られることになる点について、赤塚社長は「将来的には海外のスタートアップとの提携やプロ経営者などの外部人材の登用を進めることで成功確率を上げていきたい」と語る。
ただ、東電は総括原価で収益を確保できる環境が長く続いており「ベンチャー精神や営業や新事業を開拓するノウハウに乏しい」(新電力関係者)との指摘も多い。新会社が軌道に乗るかは未知数と言えそうだ。(福本裕貴)