防犯カメラの設置増で犯罪件数が半減 刈谷市
防犯カメラの設置で治安向上を実現――。町の治安悪化に悩んでいた愛知県刈谷市が、交差点や公園などに防犯カメラを積極的に導入して犯罪を抑止し、町の安全性向上の成果を上げている。
刈谷市では、2003年度に刑法犯認知件数が4500件を記録。治安の改善が課題となっていた。そこで、11年度から街頭に防犯カメラを積極的に設置し、17年度には900台を超えるまでに増やした。その結果、12年度から17年度の5年間で刑法犯認知件数が46.4%減少した。
同市は11年に発表した第7次総合計画(11~20年度)の重点プロジェクトの1つとして「安心して歩けるまちづくり」を掲げ、防犯灯や防犯カメラの整備を推進して犯罪抑止力を高めることを目標にした。
同市では、毎年、街頭防犯カメラ設置事業費として多くの予算を割り当て、交差点や公園、駅、地下道、市営駐車場などに防犯カメラを次々に設置した。12年度末に106台だった防犯カメラを、17年度には930台と約9倍に増やした。18年度末には1000台を超える見込みだ。
事件の早期解決にも寄与
さらに多発している自動車関連(車上狙いや部品狙い)の窃盗対策として、賃貸共同住宅または分譲マンションの駐車場、駐輪場への防犯カメラ設置を促す支援制度も設けている。50万円を上限に、設置にかかる経費の2分の1を補助金として交付している。
それに伴い12年度には2239件だった刑法犯認知件数は、17年度には約半分の1200件台前半にまで減少した。ピークだった03年度の4500件と比べると3分の1以下の水準だ。特に住宅を狙った侵入盗は、12年度の263件から17年度の90件台へと大幅に減った。
防犯カメラが早期の解決につながった例としては、17年2月に発生した強制わいせつ事件で、10代の女性の体を触ったとされる会社員の男を特定。同年5月のストーカー事件では、女子高校生につきまとい行為をした犯人の特定に役立った。
一方で、防犯カメラには個人のプライバシー保護の観点から問題があるとの指摘もある。そこで市では、「住宅内部などの私的空間を映さない」、「管理責任者および取り扱い担当者以外の者による防犯カメラなどの操作を禁止」、「画像の保存期間はおおむね1カ月以内とする」、「防犯カメラから知り得た情報をみだりに第三者に漏らさない」、「記録したデータの外部への持ち出しを禁止」、「捜査機関からの映像の提供要請については、文書による正規の手続きが必要」など個人情報が漏洩しないよう一定のガイドラインを設けている。
市では、この他にも防犯灯の設置や地域安全パトロール隊の活動支援なども進めている。こうした取り組みで、11年度に49.7%だった「犯罪や事故への不安がなく安心して外出できると思う」市民の割合を、20年度に60%まで増やす目標を掲げている。
(ライター 田口由大)
[日経 xTECH 2018年2月27日掲載]