平昌五輪、ロシア参加認めず「組織的な不正」認定
【ローザンヌ=細川倫太郎】国際オリンピック委員会(IOC)は5日夜(日本時間6日未明)、スイス・ローザンヌで理事会を開き、組織的なドーピング関与が疑われるロシア選手団について2018年2月の平昌冬季五輪の参加を認めないと発表した。国家ぐるみの不正を認定する一方、一定条件を満たした選手は個人資格での参加を認める。ドーピング問題に厳しい姿勢を示した格好だが、これまで一貫して疑惑を否定してきたロシア側の反発は必至だ。
トーマス・バッハ会長は5日の記者会見で「五輪とスポーツの高潔性に対する前代未聞の攻撃だ」と述べ、ロシアによる組織的な不正を強く非難した。過去に人種差別政策で南アフリカ選手団の資格を停止した例はあるが、薬物問題で一国家の参加を認めないケースは初めて。
独自に調べてきたIOCの調査委員会は科学的な証拠を積み上げ、「ロシアで組織的な不正が行われていた」と結論づけた。処罰としてロシア・オリンピック委員会(ROC)の資格を停止し、平昌冬季五輪への選手団の派遣を禁止する。
ROCに対し、ドーピング問題の調査にかかったお金や、IOCが立ち上げた独立検査機関の設立費用など、計1500万ドル(約17億円)の支払いを求めることも決めた。ソチ冬季五輪時にスポーツ相だったロシアのムトコ副首相らロシア側の関係者を五輪から永久追放することも発表した。
一方、潔白な選手の権利を守るため、条件を満たした選手は「ロシアからの五輪選手」としての個人参加を認める。選手は五輪旗の下で競い、表彰式などでは国歌の代わりに五輪賛歌が使われる見通し。
個人参加する選手は過去にドーピング違反歴がないことや、大会前に厳しいドーピング検査を受けることなどが条件となる。IOCは平昌五輪までに2万件以上のドーピング検査を実施する予定。各競技の上位20位までの選手や、急激に戦績が向上した選手などを重点的に調べるとしている。
ロシアは自国開催だった前回の14年ソチ五輪で、国別で最も多い33個のメダルを獲得した。だが、その後の16年に検体のすり替え工作など組織的なドーピング疑惑が明らかになり、世界反ドーピング機関(WADA)は国家ぐるみの関与があったと認定した。
IOCはソチ五輪で採取したロシア選手の検体を再検査したところ、ボブスレーの選手ら各競技で違反が発覚。4日までに五輪からの永久追放など25人の選手の処分を決めていた。
16年のリオデジャネイロ夏季五輪では、国際パラリンピック委員会(IPC)がロシアの選手を全面除外した一方、IOCは各競技の国際連盟(IF)に判断を委ねた。この決定に対し、欧米からは「責任回避」などと批判が殺到。今回は前回より厳しい処分とし、国際社会の目にも配慮した。
韓国の平昌冬季五輪の大会組織委員会は6日、「IOCの決定を尊重する」とのコメントを発表した。