「日本会議」本の出版認める 東京地裁、判断を一転
ノンフィクション作家菅野完氏のベストセラー新書「日本会議の研究」に真実ではない部分があるとして出版差し止めを命じた1月の仮処分決定に対し、東京地裁(中山孝雄裁判長)は31日、「真実でないと断じるには疑念が残る」と判断、出版元の扶桑社による異議を認め、一転して出版を認める決定をした。
扶桑社によると、これまでの発行部数は計18万5千部。1月の決定を受けて該当部分の36文字を黒塗りにした修正版が既に店頭に並んでおり、今後の対応を検討するとしている。
新書は、保守系団体の日本会議と宗教法人「生長の家」の関係を記載。生長の家の幹部だった男性が、6カ所の記述が真実でないとして出版差し止めを求めて仮処分を申請し、東京地裁(関述之裁判長)は1月6日、1カ所を真実と認めず差し止めを命じた。
これに対し中山裁判長は「記述は男性の姿勢を論評する内容であり、これによって男性の日常生活に重大な支障が生じているとは認められない」と指摘した。
菅野氏は取材に「当然の決定だ。主張が通りうれしく思う。今後も言論の自由の観点に立ち活動していく」と話した。
男性側の代理人弁護士は「人権保護上まったく容認できない不当なものだ。強く抗議する」としており、東京高裁に不服を申し立てる。
「日本会議の研究」は大阪市の学校法人「森友学園」や籠池泰典氏についても取り上げており、菅野氏は出版後の3月、籠池氏に単独インタビューしている。〔共同〕