若手に場数踏ませたい 熱いぞ小劇場演劇(3)
軌跡
数々の有名劇団がステップアップの舞台にしてきた大阪・ミナミの小劇場、ウイングフィールド(最大100席)で、2010年から若手劇団に光を当てた企画「ウイングカップ」が行われている。今年9月から来年1月までの5回目は計10劇団が登場、最優秀賞などをめぐって競う。
審査員は今年、OMS戯曲賞大賞を受賞した土橋淳志、演出家の笠井友仁ら6人。参加劇団には同劇場の賃料を抑え、1日だけとはいえ無料で舞台を使って稽古できる特典を与えている。一方、「前夜祭」「後夜祭」と呼ぶ演劇関係者らを交えた交流会へ出席すること、劇団同士が互いの公演に招待することを参加条件として課している。
こうした特典と参加条件を設けた背景には、若手劇団が費用負担などで専用劇場で公演する機会をなかなか持てないという事情がある。結局、劇団員の知人らを動員して帳尻を合わせることになりがちだ。審査員も務めるウイングフィールドの寺岡永泰・事業主任は「若手劇団が様々な意見や指摘を聞ける枠組みを作り、それを糧に成長してもらいたい」と話す。
初回は寺岡が劇団側に声をかけて参加者を集めたが、今では半数は自発的に応募してきた劇団が占める。企画の認知度は高まってきたという。ウイングフィールド代表の福本年雄は「劇場を単に貸すだけでなく、若手を育てる場でもありたい」と強調。「ウイングカップ」は10回までは続けたいという。