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干し殺しの悲劇 語り継ぐ 法界寺の軍図絵解き(時の回廊)

兵庫県三木市

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「中央に見ゆるは三木の本城なり」。背丈を超す大きな絵図を棒で指しつつ、よどみない講釈が堂内に響く。兵庫県三木市の法界寺で17日、「三木合戦軍図絵解(えと)き」が多くの聴衆を集めて催された。絵解きとは絵図を示しながら物語を講じる伝統行事だ。同寺では、天正6年(1578年)から約2年間にわたり繰り広げられた三木城攻防戦の次第を毎年説き聞かせている。

激戦の惨状描く

播州を治めた別所長治は織田信長が毛利氏と対決するにあたり、それまで服していた信長に反旗を翻した。長治の籠もる三木城を攻めた羽柴秀吉が採ったのが、周囲に城(付城=つけじろ)や土塁を次々と築いて補給路を断つ兵糧攻めだった。

糧食が尽きた三木城内では餓死者が数千に上り「三木の干し殺し」と呼ばれる惨状を呈した。長治は城兵の助命を条件に降伏、自害したとされる。彼の辞世の句が伝わる。

今はただうらみもあらじ諸人(もろびと)の 命にかわるわが身とおもえば

法界寺は長治の菩提寺で、年1回、慰霊法要と併せて絵解きを続けている。用いるのは縦約2.2メートル、幅約1.4メートルの合戦図3幅1対。度重なる激戦で首や胴が両断された戦死者の姿や飢えて馬を食す場面、集団で切腹する場面などを生々しく描く。17世紀制作の原図を天保12年(1841年)に模写、寄進されたもの。絵解きはこの時、既に行われていたとの記録がある。

絵解きは今も各地に伝わるが、大半は寺の縁起など仏教説話で、戦記は他に愛知県で1例が残るのみという。

2人で伝統紡ぐ

この日の絵解きを講じたのは兵庫県立教育研修所の生田淳仁さん(50)と三木市立吉川中学校教諭の西森良企さん(48)。「元は檀家の子供が行う行事で、内容は口伝だった」と生田さんが教えてくれた。約30年前、絵解きを行えるのが80代の1人となり「これではいけないと高校時代、数人で引き継いだ」(西森さん)。だが仲間は進学や就職で相次ぎ三木を離れ、伝統を紡ぐのは2人だけだという。

近年「長治が命と引き換えに城兵を救った」との定説に疑義が出され、波紋を広げている。大手前大の小林基伸教授(日本中世史)は「秀吉の家臣が宇喜多直家に宛てた書状に『ことごとく殺した』と記すなど、当時の史料を考察すると落城後に大量殺戮(さつりく)があった可能性が高い」と指摘。定説は秀吉をたたえるために書かれた書物を基にしており信頼性が乏しいと唱える。

だが長治の遺徳を顕彰してきた地元の反応は芳しくない。西森さんも「三木では秀吉の評判も悪くない。信長が殺戮を命じたものの実行されず、偽装した可能性なども考えられる」と新説に否定的だ。

戦で荒廃した三木の復興のため、秀吉が与えた免税などの特権が後の繁栄につながったことも、こうした見方に影響しているのかもしれない。

法界寺の北川真昭住職(88)は絵解きに先立ち「人を思いやる長治の心を我々も大切にしよう」と聴衆に呼びかけた。三木の人々は悲惨な戦を、恨みではなく鎮魂と感謝の念をもって語り継いでいる。

大阪・文化担当 竹内義治

写真 大岡敦

<より道> 秀吉の付城と土塁跡

三木合戦は羽柴秀吉がその後に鳥取城や備中高松城などで繰り返した包囲戦の先駆けとなった。

三木城は元和元年(1615年)ごろ破却され、城跡には現在、市役所や住宅などが立ち並ぶ。一方、周囲には20の付城跡と25の土塁跡が現存。2000年から保存の取り組みが本格化し13年、国史跡に指定された。

三木市教育委員会の調査で、付城は三木城の南北に天正6年(1578年)7月~翌年10月、段階的に包囲を狭めるように築かれたことが確認された。その構造は次第に複雑化し、包囲突破に備えた様子がうかがえる。

秀吉が本陣を置いた平井山ノ上付城跡や法界寺の裏にある這田(ほうだ)村法界寺山ノ上付城跡には、雛壇(ひなだん)状の曲輪(くるわ)や土塁などの遺構が良好な状態で残存。案内標識も立てられ見学しやすい。

付城の1つを発掘したところ天目茶碗(てんもくぢゃわん)の破片が出土した。「秀吉が本陣に津田宗及を招いて茶会を催した記録がある。将兵も茶をたて休んだのでは」(市教委)。これら出土遺物は三木城跡にある三木市埋蔵文化財展示室で原則、毎月第1・第3日曜に公開している。

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