害鳥対策にタカ活躍 石川の鷹匠起業、繁華街に出動
男性の腕からタカが勢いよく飛び立った。翼を広げると約1メートル。威嚇すると福井駅前の繁華街から小鳥が次々に逃げていった。巧みに操るのは石川県小松市の鷹匠(たかじょう)、吉田剛之さん(45)。2013年、狩りに使うタカを調教し害鳥を追い払う会社を小松市に設立。深刻化する繁華街の害鳥対策に11羽の相棒と奮闘している。
もともとはペットショップなどを経営する石川県の会社で働いていた。05年、福井市のペットショップで野生のハヤブサを保護し、世話をしたのがきっかけで「猛きん類を飼ってみたい」と思うように。翌年、米国などに生息するタカをペットとして約30万円で購入した。
09年にNPO法人日本放鷹協会(岐阜)へ入会。12年に試験に合格し、協会が定める鷹匠の認定を得た。仲間から「海外で害鳥駆除にタカを使っている」と聞き、「自分もやってみよう」と13年に40歳で脱サラし独立。12年に新たに購入し、今も主力で活躍する「九十九君」とともに起業した。現在「社員」は11羽に増えた。
近年、各地の繁華街で害鳥被害が深刻だ。天敵から狙われにくい市街地にハトやスズメ、カラスなどが数千羽単位で集まり、近隣住民らがふんや鳴き声の騒音で悩まされている。吉田さんはこれまで、自治体や企業の依頼で愛知県一宮市や金沢駅前など、全国各地で害鳥を駆除してきた。
福井駅周辺では、08年ごろからムクドリが急増。住民からの苦情を受け県が14年、吉田さんに依頼した。ムクドリが飛来する夏から秋にかけて約2週間に1回の頻度で寝床の街路樹にタカを飛ばし、危険な場所だと認識させた。県によると、ピーク時の約4千羽から3年間で20羽まで減った。
タカを飼い始めた当初は、呼んでも帰ってこないことがあったが「思い通りに飛んでくれると心が通じていると感じる」と吉田さん。「1600年以上の伝統を誇る鷹匠の技術を後世に残したい」と後継者の育成も視野に入れる。〔共同〕