退位・改元の準備を滞りなく進めよう
皇族や首相、衆参両院議長、最高裁長官の三権の長らが出席した皇室会議が1日開かれ、特例法に基づく天皇陛下の退位の日程が固まった。陛下が2019年4月30日に退位、皇太子さまが翌5月1日に新天皇に即位する。
元号を改める改元も同日に行うという。「平成」は31年でピリオドを打つことになった。
固まった日程は、極力、静かな環境のもとで、国民生活への影響を最小限にすることを考慮したものという。
年末年始の退位・改元は、さまざまな宮中行事と重なるため、宮内庁側が難色を示したとされる。年度末の3月末の退位になると、4年に1度の統一地方選や国会での審議の山場と重なるおそれがあるほか、引っ越しなど人の移動も多く、企業も繁忙な時期にあたってしまう。
今回政府は、こうした点を熟慮したうえで、妥当と思われる日程を選んだのであろう。政府や企業は今後、退位と改元に向けたさまざまな準備を遅滞なく進める必要がある。
存命している天皇の退位は約200年前、江戸時代の光格天皇以来となる。政府は年明けに官房長官をトップとする組織を立ち上げ、退位や即位の儀式のあり方について検討を始めるという。
皇室に連綿と続く伝統を踏まえつつも、象徴天皇にふさわしい形式にすることが必要だ。高齢の皇族の方や諸外国からの来賓の負担とならないようなやり方を工夫してほしい。
新元号について、政府は有識者会議を発足し、来年中に新元号を決めて公表するとしている。カレンダーや手帳といった生活に身近な品々に加え、コンピューターのシステム、諸官庁の文書や金融関連の証書類など、影響は経済や社会の広範囲に及ぶ。できるだけ、移行が円滑に進むよう手立てを尽くしてほしい。
政府には、4月末退位と翌1日の即位について、4月29日の昭和天皇の誕生日に近く祝賀ムードが高まる期待があるようだ。新しい時代の門出にふさわしい雰囲気づくりにも心を配ってもらいたい。
同時に、国会で付帯決議として採択された「女性宮家の創設検討」など、皇族減少と皇位の安定的継承への対策にも本腰を入れることが必要だ。長く国民と皇室の絆を深めるために、忘れてはならない重い課題である。