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「三冠王」 定着の陰に伝説の強打者

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 打率、本塁打、打点の打撃3タイトルを独り占めするプロ野球の「三冠王」。いつ誰が考え出した言葉なのかは分からなくても、きっかけを作った人物なら特定できます。打者最高の勲章を逃し続けた伝説の強打者を抜きに、この言葉は語れません。さらには、競馬の「三冠馬」も密接に関わってきます。

最も単純なのは、初代三冠王の誕生と前後して言葉も生まれたという考え方。まずは歴史をたどる必要があります。中島治康(巨人、故人)が史上初の三冠王となった1938年秋シーズン、この偉業は全く話題になりませんでした。当時は現在と違う2季制のため記録の統計方法が微妙(=春秋通算すべきか否か)だっただけでなく、「打撃3タイトルの独占に価値がある」という概念が乏しかったようです。「後世になって記録を整備したら、そうだったと分かった」と元パ・リーグ記録部長でプロ野球アナリストの千葉功さん。何せ11月17日付読売新聞は中島が今でいう最優秀選手(MVP)と首位打者の「二つの栄誉を一手に収めた」と触れたのみ。三冠王という言葉も生まれていません。

65年に野村克也(南海)が史上2人目の三冠王になると、戦後初の達成とあって大きな反響を呼びます。10月22日には日本経済新聞ほか全国紙各紙に「三冠王」の見出しが躍ったことから、この時点で一般化していたことがうかがえます。中島から野村まで27年もの間、誰も三冠王を成し得なかったのに、言葉が先に定着していたのは不思議に思えるかもしれません。この間の空白を埋める鍵を握る人物こそが、「怪童」こと中西太(西鉄)です。

二冠王になること4度

53、55、56、58年と三冠王を逃すこと実に4度、しかもいずれも僅差。これだけ短期間で大記録への挑戦が繰り返されれば、ファンもマスコミも自然と記録への関心が高まるというもの。中西が広く知らしめたであろう「打撃3タイトルの独占の価値」、一体どう報じられたのでしょうか。当時の全国紙と野球専門誌「ベースボール・マガジン」(BM、現・週刊ベースボール)を調べてみると、53年は初の二冠王で注目度も低かったためかその記録に言及した記事は見つかりません。それが55、56年になると英語の「Triple crown」を片仮名書きした「トリプル・クラウン」のような例が多く見られるようになります(BM55年11月号など)。しかしこれでは字数が多い。中西の快挙が2度3度と持ち越される過程で、簡潔な日本語訳も考え出す必要に迫られたのは容易に想像できます。

中西は僅差で4度三冠王を逃した
打率本塁打打点備考
1953.314×36◎86◎岡本伊三美(南海)に4厘差
55.332◎35◎98×山内和弘(毎日)に1点差
56.325×29◎95◎豊田泰光(西鉄)に5毛差
58.314◎23◎84×葛城隆雄(大毎)に1点差

いわく「打撃三賞」(55年12月1日付朝日新聞)、「トリプル冠」(BM57年10月号)、「三重勝」(BM58年3月号)――。苦心の跡が垣間見えるのは確かですが、いずれも珍訳で定着には至りませんでした。そんな中で登場したのがBM58年3月15日号の「首位打者から三冠王」の見出し。主要スポーツ紙を含めて調べられた範囲で最も古い、三冠王の用例です。開幕前に登場したこの言葉は、4度目の三冠王挑戦となったこの年のシーズン中、急速に普及します。閉幕した10月上旬、日経、読売、毎日新聞、産経新聞にもそろって使われているのです。

競馬の三冠馬が先

では三冠王という訳が生まれた経緯は? それ以前からあった競馬用語の「三冠馬」の影響を受けた可能性が濃厚です。中央競馬で皐月賞、日本ダービー、菊花賞という3歳限定戦3レースの全勝馬を指す三冠馬。英語では同じく「Triple crown」と表すこの言葉は、三冠王より先に誕生していました。53年11月21日付読売で、同年の二冠馬ボストニアンに触れた用例があります。ヒントとなるのが前述の「打撃三賞」。別の記事で「三賞」単独の用法がある点と、大相撲の三賞制度が47年にスタートしていたことを併せて考えれば、大相撲用語に倣ったという推理は十分に成り立ちます。このように他のスポーツ用語から着想を得る例は珍しくなかったと考えられるだけに、三冠馬が三冠王に結び付くのは自然な流れだったといえます。

三冠馬の歴史についても補足しておきましょう。第1号が当時、「三冠」の名で呼ばれなかった点はプロ野球と一致しています。41年、初の三冠馬となったセントライトについて月刊誌「優駿」12月号は「三栄冠馬」と記述。三栄冠馬が三冠馬へと変化した理由について、日本中央競馬会(JRA)元広報部長で関西広報室上席調査役の水田巳喜男さんは「crownを栄冠と訳すのは無理がある。冠と訳す方が自然で、呼びやすい名前の三冠の方で定着したのでは」と語ります。

歴代の三冠王・三冠馬
三冠王三冠馬
1938(秋)中島治康(巨人)
41セントライト
64シンザン
65野村克也(南海)
73、74王貞治(巨人)
82落合博満(ロッテ)
83ミスターシービー
84ブーマー・ウェルズ(阪急)シンボリルドルフ
85、86ランディ・バース(阪神)
落合博満(ロッテ)
94ナリタブライアン
2004松中信彦(ダイエー)
05ディープインパクト
11オルフェーヴル?

三冠馬という表現が先に生まれた理由は「競馬は野球ができるずっと前からあったから」と水田さん。競馬発祥の地の英国では18世紀後半に第1回ダービーが開催されたのに対し、野球発祥の地の米国で初のプロ野球チームが組織されたのは19世紀後半。長い歴史と伝統に裏打ちされているという見解でした。64年にシンザンが戦後初の三冠馬となった時点では既に浸透しており、全国紙各紙が「三冠馬」という見出しを使っています。

功績は色あせず

中西の自著「人を活かす 人を育てる」には1打点差で打点王を逃し、二冠王に終わった55年を振り返って「もし大騒ぎされるようなものだったら、私もしゃかりきになっていただろう(略)。それに1打点差なら何とかなった気もする」との記述があります。つまり当時三冠王が今ぐらい話題になっていれば、積極的にタイトルを狙いにいったのに、というわけ。何とも悔しさがにじむ述懐です。中西は手首の故障もあってその後はかつての打棒を取り戻せず、ついに三冠王にはなれないまま69年に引退を迎えました。とはいえ「トリプル・クラウン」を「三冠王」へと変化させるきっかけを作っただけでなく、三冠王への度重なる挑戦を通じて「記録のスポーツ」たる野球の醍醐味をファンやマスコミへ認識・周知させる役割も果たしました。その功績は決して色あせることはありません。

(中川淳一)

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