東京ヴェルディと横浜F・マリノスによる伝統チームによる国立開幕戦は、横浜が劇的勝利を収めた。前半7分に東京VのMF山田楓喜が鮮やかなFKを直接決めると、横浜は後半44分にFWアンデルソン・ロペスのPKで追いついた。さらにロスタイム3分、DF松原健のゴールで勝ち越した。黄金カードの大熱戦に、詰めかけた5万3026人の大観衆は沸きに沸いた。

16年ぶりにJ1に復帰した東京Vに対し、AFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で初めて8強入りした横浜は、先発には34歳のベテラン、MF水沼宏太が名を連ねた。父貴史氏はこの日の試合解説者を務めた。同じくマリノスの主力選手としてJリーグ元年の1993年5月15日、東京・国立競技場での開幕カードとなった東京V戦にはフル出場している。父子で迎えた開幕国立の舞台だった。

試合に先立ち、31年前にJリーグ開幕を宣言した当時のチェアマン、川淵三郎氏が再びあいさつ。途中で感極まり言葉に詰まる。今やJ3まで60クラブ。発展したJリーグの歴史に思いを馳せ、その立役者は感無量の面持ち。歴史をつむぐ、誰もが待ち望んだ黄金カードが実現した。

開始早々、試合が動いた。東京Vは横浜ゴール前へと自陣からロングボール送ると、GKポープがエリア外まで出て体に当てて対応。すぐさま東京VのFW木村にボールを奪われると背後から突き倒した。主審の笛が鳴る、ファウル。VARが介入。ハンドでの決定機阻止と退場処分の確認作業が行われたが、最初の判定通りファウルによるFKで落ち着いた。

そして前半7分、この直接FKの好機にMF山田楓の左足が火を吹いた。ゴール右、約23メートルの距離から左足でシュートを狙うと、ゴール右隅に鋭く巻きながら突き刺さった。5万人以上で埋まった会場がどよめく、東京Vが先制した。

その後も東京Vの敵陣でのボールカットからショートカウンターがはまる。

前半21分には斎藤からエリア内の左でパスを受けたFW染野が相手2人をかわしてシュート。コースを消して前に出たGKポープにセーブされた。同30分には相手パスを鋭い出足でインターセプトした山田楓がドリブルで持ち込み、木村へパス。右足でのシュートはGKポープに当たりゴール方向へ転がったが、横浜DF上島がゴールライン際でクリアした。

前半38分には右サイドでパスを受けた山田楓がドリブルで1人かわし、左足で強烈なシュート。これはGKポープがファインセーブし追加点を許さなかった。球際の強さ含めヴェルディのプレーが際立つ前半だった。

1点を追う後半11分、横浜は水沼とMF喜田を下げてFWのヤン・マテウスと宮市のアタッカー2枚を投入し、攻勢に出た。後半17分にFWヤン・マテウスのクロスからMF渡辺皓がシュート。左に流れたところを宮市が押し込むがオフサイド。続く19分には右サイドのDF松原がゴール前へシュート性の速いグラウンダーのクロスボールを送る。宮市がファーサイドで滑り込んだが届かなかった。

その後も横浜は鋭い攻撃からエースのアンデルソン・ロペスらがゴールを狙ったが、東京VのGKマテウス、DF谷口、林を中心とした守備陣が粘り強く対応した。

しかし横浜の地力が勝った。後半44分にA・ロペスがPKを決めて同点とする。さらに追加タイムに入った後半48分、ヤン・マテウスのパスを受けた松原が左足で豪快にゴール。試合を引っ繰り返した。くしくも、松原は元年の1993年に生まれた31歳だった。

31年前は、ヴェルディがマイヤーのゴールで先制。その後、マリノスがエバートン、ディアスのゴールで2-1の逆転勝ちした。その当時と同じ結末を再現し、トリコロールが伝統の緑を土壇場で退けた。【佐藤隆志】

93年J元年の伝説の一戦再び 横浜が終盤逆転で開幕戦勝利 東京V善戦も及ばず/ライブ詳細