【32年前の今日:1990年5月12日】クモ男が現る「巨人ハ永遠ニ不ケツデス!」

野球界の名シーンや思わぬトラブルをカレンダーとともに振り返る「●年前の今日」。90年5月12日、広島市民球場に「クモ男」が出現しました。当時の日刊スポーツの記事をどうぞ。(1990年5月13日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

<広島1-3巨人>◇1990年5月12日◇広島

32年前の1990年、5月12日の夜、広島市民球場に「クモ男」が出現した。広島-巨人戦の試合中、バックネットをするするとよじ登り巨人批判の垂れ幕などを垂らし、発煙筒を投げたりと試合を中断させた。

男は逮捕されたが、この試合はNHKで全国放送されたこともあり大きな話題となった。

日刊スポーツは翌13日、「巨人戦中断 忍者男逮捕」の見出しで1面トップで伝えた。

午後7時20分 NHK全国中継開始直後

【復刻記事】

なんともはや、迷惑な男がいたもの。12日の広島対巨人戦に、とんだ忍者男がちん入した。男は6回表、巨人の攻撃前にバックネットをスルスルとよじ登り、巨人批判の垂れ幕などをたらし、試合が9分間中断した。

毒気にあてられたのか、広島の反撃も何やらシリすぼみ。巨人は対広島4連敗を免れた。

6回表、巨人の攻撃に入る寸前。時は午後7時20分ちょうど。NHKテレビの全国中継が始まった直後だった。

黄色いふろしきで覆面をした忍者姿の中年男が高さ13メートルのバックネットに取りつき、広島、巨人ナイン、スタンドのファンがあ然とする中、よじ登り始めたではないか。

用意周到。傘の柄をカギにしたロープをバックネット裏上部にひっかけ、ロッククライミング風にぶら下がると、背負ったリュックから垂れ幕を取り出し、バックネットに掛け始めた。

もちろん試合は中断。平光球審がブ然として見つめる中、垂れ幕1本は下へ落としたが、続々と3本を披露してしまった。

広島球場のバックネットによじ登り垂れ幕をたらす「クモ男」(90年5月12日撮影)

広島球場のバックネットによじ登り垂れ幕をたらす「クモ男」(90年5月12日撮影)

タテ3メートル、横25センチの白布に黒字で「天誅!悪ハ必ヅ滅ビル!」「巨人ハ永遠ニ不ケツデス!」「ファンヲアザムクナ」と書いた3本。落とした1本には「カープハ永久に不滅デス!」と書かれてあった。

額にはカープの「C」マーク。この男は広島ファン。巨人を非難する3枚の垂れ幕のわきで、三塁側巨人ベンチを指さして「ジャイアンツは許さないゾ」と叫びまくった。

その1枚の「天誅!-」の幕には、桑田と思われる似顔絵が描かれていた。

桑田と思われる似顔絵

前代未聞の試合ストップ。下から降りるよう説得する警備員に向けて、発煙筒を2本投げつける悪質な妨害行為に至って、最初は興味半分で笑っていた観衆も怒った。

目的を果たし? 降り始めたこの忍者男に、バ声が飛び、ネットを揺すって落とそうとするファンも。

場内騒然。男が地下足袋を滑らせて落ちそうになるシーンもあり、両軍ベンチともあきれ顔で見守った。