フジテレビは21日、特番「週刊フジテレビ批評特別版~旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題と”メディアの沈黙”」(土曜午後2時)を放送し、ジャニーズ事務所に関しての社内調査結果を報告した。

同局は(1)週刊文春のジャニー喜多川氏の「セクハラ」キャンペーン報道、(2)報道局に旧ジャニーズ事務所への配慮があったのか(3)性被害の実態の認知について(4)旧ジャニーズ事務所への忖度(そんたく)(5)今後の同局のあり方について、番組編成や制作に関わる、社員・元社員約77名に社内調査を行った。

(1)については「ニュースとして取り上げる重みがなかった」「芸能ゴシップ、スキャンダル的な受け止め方をした」という声を紹介した。今月2日に事務所の記者会見を報じた際には、平松秀敏編集長は「報道マンとして痛恨の極みだと反省せざるを得ない」としていた。

同局は事務所が所属タレントらの聞き取り調査を始めた段階の4月23日に初めて、この問題について報じた。「ジャニーズ事務所側が動き始めたことがきっかけになった」と報告。

渡辺奈都子報道局長は「男性に対する性加害について、意識・認識が著しく低かったことが調査で改めて分かりました。古い価値観が根底にありまして、報道として取り上げるか否かの議論にも上がっていなかった。未成年に対する性加害、人権問題に対する我々の感度の鈍さは被害に遭われた方の心情を考えますと、報道に携わるものとして深く反省しております」とコメントした。

(2)について、同局は旧ジャニーズ事務所の所属タレントの逮捕情報について他社に先駆けて報道する準備をしていた際にも、報道と編成との協議と調整で報道が遅くなったことがあったという。元報道局幹部を「事務所への遠慮や忖度(そんたく)はあったと思う」「キャスティングに影響するかと思い、消極的になることがあった」と紹介した。

渡辺報道局長は「明らかに旧ジャニーズ事務所への気遣いや配慮は報道にもあったことは認めざるを得ない。報道が遅れてしまった案件があったことはじくじたる思いです。しっかり襟を正していきたい」とした。

(3)について、「個人差はあれど、認識していたと思う」などの証言の他に、「ジャニーズJr.出身の仕事仲間が飲み会で酔っぱらった際に、自分の被害に遭った話を笑い話にしていて、深刻な性被害とは受け止められなかった」「刑事事件になっていない性犯罪を取材・報道することはハードルが高い」との声が上がった。

この社内調査について同局の大野貢情報制作局長は「組織全体として性加害に対する認識が著しく低かったと受け止めている。サインを見過ごすことのないよう意識を高めて参りたい」。立松嗣章編成制作局長は「うわさは多くの社員が耳にしていたが、深刻な性被害とは想像が出来ませんでした。改めて人権問題として認識が不足していた」と報告した。

(4)について「ジャニーズ主役のドラマでは他のイケメングループのキャスティングを避けたり、事務所を辞めた人はキャスティングしない方が良いという考えがあった」との声もあった。大野情報制作局長は「必要以上に気を使っていた」とした上で「人に寄り添う番組作りが出来ていなかった」とコメントした。

また、フジテレビ番組審議会でも委員からさまざまな意見が上がったと明かし、テレビ局の姿勢や責任を問う声が上がったと報告した。